過飽和は、通常は冷却や貧溶媒添加によって溶液中の生成物の溶解度を下げることで生じます。溶液の冷却速度または貧溶媒の滴下速度は過飽和度に直接影響を与えます。
この例では、安息香酸を水-エタノールの混合溶媒に未飽和の濃度で調整し、温度は25℃の一定とし、そこに水をそれぞれ0.1g/秒もしくは0.2g/秒の2つの速さで添加します。in situ FTIRスペクトロスコピーを使用し、液体の濃度をリアルタイムで測定します。各実験の脱過飽和曲線を使用したエタノール-水混合液への安息香酸の溶解度曲線を右の図に示します。 脱過飽和曲線は、溶液が未飽和領域から始まることを示しています。 水を添加すると、プロセスは溶解度曲線を越えて過飽和領域まで進みます。結晶核生成によって液体濃度が下がり、その後は溶解度曲線に近い状態を維持します。 貧溶媒添加が終了すると、液体濃度は溶解度曲線まで下がります。貧溶媒を高速で添加すると、過飽和度はプロセスを通じて高くなります。これは、結晶の成長と核生成の速度が遅く、過飽和を十分に消費できていないからです。
この実験では、プロセスパラメータと過飽和の変化が結晶サイズと形状の両方に影響を与えます。PVM技術(ParticleView)を使用して各実験の最後に撮影した画像がこのポイントを示しています(右に示す)。低速で滴下すると、大きい、形状のはっきりした長い板状の結晶が得られますが、高速で添加すると、凝集しやすい細い針状結晶になります。この結果は、晶析系の過飽和を変化させることで、結晶のサイズ、形状、凝集の程度を調整できることを示しています。 また、過飽和が優勢になるレベルを理解し、制御することの重要性も示します。
この簡単な例は次の重要な原理を説明しています。
貧溶媒の滴下速度の制御による結晶サイズの制御は、十分に理解され、科学的原理として確立されています。 ただし、証拠に基づく有効な晶析プロセスの開発と向上は十分とは言えません。たとえば、高速で過飽和を生成すると、不要な不純物が過渡的な油相形状として(a)、または不要な多形が混在した状態で(b)生成されます。同様に、大きい結晶を生成するために常にサイクル時間を犠牲にすることもできません。つまり、過度に低速の冷却や貧溶媒の添加は不可能です。
in situ ATR-FTIRスペクトルを使用したキャリブレーションフリーの過飽和制御手法を紹介しています。
晶析装置の操作で最適な結晶サイズと粒度分布を目指し、制御することで、以下を実現することができます。
多形は、製薬業界やファインケミカル業界における多くの結晶性固体で一般的な現象です。化学者は、目的の多形体を意図的に結晶化させることで、分離特性を強化し、ダウンストリームのプロセスでの課題を克服し、バイオアベイラビリティを高め、あるいは特許抵触を防ぐことができます。多形転移と形態転移をin-situおよびリアルタイムに識別することで、予期せぬプロセスの混乱や、スペックアウトの製品、コストの高い原料のプロセスのやり直しなどを排除できます。
科学者は高価な化合物を再晶析化して、目的の物理特性を持つ結晶生成物を最適なプロセス効率性によって取得します。最適な溶媒の選択から乾燥した結晶生成物の取得まで、適切な再晶析プロセスの設計には7つのステップが必要になります。この再晶析ガイドでは、再晶析プロセスを進める手順を段階ごとに説明しています。再晶析の各ステージでどのような情報が必要かについて解説し、重要なプロセスパラメータの制御方法についての概要も述べます。
溶解度曲線は一般的に溶解度、温度、溶媒の種類の関係性を示すのに用いられます。温度と溶解度の関係性をグラフにすることで、科学者は求める晶析プロセスの開発に必要なフレームワークを作成できます。適切な溶媒を選定すると、溶解度曲線は効果的な晶析プロセスの開発にとって不可欠なツールとなります。
科学者や技術者は、プロセス中の過飽和レベルを注意深く調整することにより、晶析プロセスを制御できます。過飽和は晶析の核生成や成長の原動力であり、最終的な結晶粒度分布を絶対的に決定付けます。
インプロセスのプローブベース技術ではサンプリングや希釈を行なう必要がなく、原液濃度で粒度や形状の変化を追跡するために利用されます。粒子や結晶に生じる変化の速度や程度をリアルタイム追跡することで、晶析性能のプロセスパラメータを最適化できます。
種晶添加は、晶析挙動の最適化における最も重要なステップの1つです。種晶添加戦略を設計する場合は、種晶サイズ、種晶の量(質量)、種晶添加温度などのパラメータを考慮する必要があります。これらのパラメータは、通常はプロセス速度と希望する最終的な粒子特性に基づいて最適化され、スケールアップや技術移転の際には一貫性を維持しなければなりません。
液液相分離、つまりオイルアウトは、晶析操作で発生する可能性のある、多くの場合検出が困難な粒子メカニズムです。詳しくはこちらへ
貧溶媒晶析では、溶媒の滴下速度、滴下場所、攪拌が、容器やパイプライン内部での局所的過飽和に影響を与えます。科学者やエンジニアは、貧溶媒滴下プロトコルおよび過飽和度を調整することで結晶サイズと個数を変更しています。
冷却プロファイルは、過飽和と晶析速度に大きな影響を与えます。最適な結晶の成長と核化のバランスが得られるように、結晶の表面積に合わせてプロセス温度を最適化します。高度な温度コントロールにより過飽和を制御することで結晶サイズや形状を変化させることができます。
晶析装置のスケールや混合条件を変更すると、晶析プロセスの反応速度や最終的な結晶サイズに直接影響を及ぼす可能性があります。 熱や物質移動の影響は、冷却システムおよび貧溶媒システムでそれぞれ考慮することが重要です。このようなシステムでは、温度や濃度勾配により過飽和度に不均等性が生じる可能性があるからです。
Lactose crystallization is an industrial practice to separate lactose from whey solutions via controlled crystallization.
適切に設計されたバッチ晶析プロセスは、求められる結晶粒度、収率、形状および純度を得ながら製造規模にうまくスケールアップすることができます。バッチ晶析の最適化には、晶析装置の温度(または溶媒組成)の適切な制御の維持が重要です。
The MSMPR (Mixed Suspension Mixed Product Removal) crystallizer is a type of crystallizer used in industrial processes to produce high-purity crystals.