- バッチリアクターとCSTRの比較
- CSTRの設計
- PFRとCSTRの比較
- 利点と欠点
- CSTRの滞留時間分布(RTD)
- CSTRのモデリングとシミュレーション
- PATの統合
- 産業用アプリケーション
- 引用と参考文献
- FAQ(よくある質問)
連続槽型反応器(CSTR)は試薬、反応物質、溶媒を仕込んだリアクター容器で、反応後の反応生成物を同時にリアクター容器から排出させます。このため、このようなリアクターは連続化学プロセスのための貴重なツールと考えられています。
CSTRリアクターは、定常状態条件下での効率的な混合と安定した均一な性能で知られています。排出時の組成はリアクター内部と同じであることが一般的です。これは滞留時間と反応速度によって決まります。
反応が遅すぎる場合や、2つの非混和性の液体や高粘度の液体に高い攪拌速度が必要な場合、またはプラグフロー挙動が必要な場合は、複数のリアクターを連結してCSTRカスケードを作成することができます。
一般的にリアクターは、連続リアクター(図1)またはバッチリアクター(図2)に分類することができます。通常、CSTRはサイズが小さく、反応物質と試薬をシームレスに添加しながら、生成物を中断なしに連続して流出させることができます。
これとは対照的に、バッチリアクターは、一定量の反応物質を反応容器に添加し、目的の生成物が得られるまで反応プロセスを続ける化学反応装置です。連続リアクターとは異なり、反応物質は連続的に添加されず、生成物も連続的に除去されません。さらに、バッチリアクターは均一に混合されず、反応中に温度と圧力の条件が変化する可能性があります。
CSTRは高濃度の反応物質を処理できることに加えて、バッチリアクターよりも優れたヒートトランスファー特性により大きな反応熱を伴う反応にも対応できます。このため、CSTRはフローケミストリーをサポートするツールと見なされています。
連続槽型反応器(CSTR)は以下で構成されています。
CSTRは、主に絶え間ない攪拌が必要な均一液相フロー反応など、産業プロセスで最も一般的に使用されています。ただし、製薬業界や細胞培養・発酵などのバイオプロセスでも使用されます。
CSTRはカスケードアプリケーション(図3)またはスタンドアローン型(図1)で使用できます。
CSTR(図1)とPFR(図4)は、いずれも連続フローケミストリーで使用されています。CSTRとPFRは、スタンドアローン型の反応システムとして機能させることも、組み合わせて連続フロープロセスの一部にすることもできます。CSTRでは混合が重要な役割を果たします。これに対し、PFRはチューブ状のリアクターとして設計されており、移動する個々のプラグに反応物質と試薬が含まれ、これらが小さいバッチリアクターとして機能します。PFR内の各プラグは組成がわずかに異なります。プラグ内では混合は行われますが、その前後の隣接したプラグとの間では混合は行われません。適切に混合されたCSTRの場合、生成物の組成は容器内全体で均一です。これに対し、PFRの生成物の組成は、チューブ状リアクター内部での位置によって異なります。リアクターのタイプによって利点と欠点は異なります。
CSTRは単位時間内にかなりの量の生成物を生成し、長時間の動作も可能ですが、反応速度が遅い反応には最適な選択肢ではない可能性があります。このような場合、一般的にはバッチリアクターが合成に適しています。
プラグフローリアクターは、一般的に他のタイプのリアクターよりもスペース効率と反応率が高くなります。ただし、急速な温度の上昇は制御が困難なため、高発熱反応には適していません。さらに通常は、PFRはCSTRよりも操作とメンテナンスのコストが大きくなります。
滞留時間分布(RTD)は、流体成分がシステムまたはリアクター内に留まる時間を表します。CSTR滞留時間は、反応物質がリアクターから排出される前にリアクター内に留まる時間に関連しています。
CSTRの滞留時間分布を理解することは、化学反応用のリアクターを設計し、最適化する上で非常に重要です。リアクターの効率と完全に反応させるために必要な時間の評価に役立ちます。理想からのずれは、容器を通る液体のチャネリング、容器内での液体の再循環、または容器内での混合不足や混合されない領域の存在などが原因です。このため、確率分布関数(RTD)を使用して、液体の任意の有限部分がリアクター内に滞留する時間の長さを記述します。これは、リアクター内の混合とフロー特性を評価し、リアクターの挙動を理想的なモデルと比較するために役立ちます。たとえばCSTRのカスケードは、カスケード設定内でのリアクターの数が増えるにつれて、より厳しい滞留時間と反応分解能を示します。
容器内の液体の滞留時間分布は、非反応性のトレーサー物質をシステムインレットに添加し、実験によって測定することができます。このトレーサーの濃度は既知の関数によって変化し、容器内の総合的なフロー条件は容器からの流出液のトレーサー濃度を追跡することで測定できます。
環境に優しく持続可能な化学は、製薬業界やファインケミカル業界で拡大傾向にあります。化学に対するこのアプローチは、無駄やエネルギー消費量を削減し、再生可能資源を使用し、安全で効率的なプロセスを設計することにより、化学プロセスの環境への影響を最小限に抑えることを目的としています。
モデリングソフトウェアを使用することで、研究者やエンジニアはさまざまな条件下での化学反応の挙動を予測し、反応条件を最適化して無駄やエネルギー消費量を削減し、より安全で効率的なプロセスを設計することができます。たとえば、バッチケミストリーとフローケミストリーの評価をすばやく行ったり、最高の性能を得るためのCSTRのサイズを決定したりできます。連続プロセスは、バッチプロセスよりも容量や溶媒の使用量が少なく、洗浄サイクルも少ないため、高い持続可能性を実現できます。
化学反応のモデリングとシミュレーションは、グリーンケミストリーの取り組みをサポートするのに特に適しています。Scale-up Suiteの高度なモデリング機能により、ユーザーは多段階反応を含む複雑な化学反応を正確にシミュレートし、温度、圧力、反応物質濃度などのプロセスパラメータを最適化して、無駄を最小限に抑え、収率を最大化することができます。
Scale-up Suite™には、特定の反応のカーボンフットプリントやエネルギー消費量の計算など、環境に対するプロセスの影響を評価できる機能もあります。この情報は、ユーザーがプロセス設計について十分な情報に基づいた意思決定を行い、プロセスをより持続可能にする機会を特定するのに役立ちます。
自動ラボスケール化学リアクターは、バッチ処理からCSTR処理に切り替えることができます。
プロセス分析技術は定常状態のモニタリングに非常に重要です。
技術アプリケーションに関するご質問やサポートが必要な場合は、当社の技術アプリケーションコンサルタントチームが適切なアドバイスをいたします。
ReactIRによるジアゾケトン濃度のモニタリングと反応温度の決定
著者らは、内部メンブレン分離技術を使用したCSTRカスケードで構成されるジアゾメタン生成器の開発について報告しています。著者らはHIVプロテアーゼ阻害剤の合成における重要な中間体化合物、キラルα-クロロケトンの効率的な3段階合成にこの技術を使用しました。コイルリアクターを使用して混合無水物を生成し、これをCSTRジアゾメタンカスケードに送液しました。テフロン製メンブレンによってジアゾメタンをCSTRに拡散させることができました。ここでジアゾメタンが無水物と反応し、ジアゾケトンを生成しました。次に、バッチリアクター内でHClと反応させることでジアゾケトンをα-クロロケトンに変換しています。
ReactIR測定を使用して中間体ジアゾケトン化合物の形成を追い(2107 cm-1ピークを追跡)、さらにトレーサー物質を追跡することで、この系の滞留時間分布を実験により測定しました。ReactIRを使用した反応追跡で、定常状態に達するためにはカスケードの第2のCSTRの5個分のリアクター容量が必要であることを確認しました。これは開始時間6時間分に相当します。
Wernik, M., Poechlauer, P., Schmoelzer, C., Dallinger, D., & Kappe, C. O. (2019). Design and Optimization of a Continuous Stirred Tank Reactor Cascade for Membrane-Based Diazomethane Production: Synthesis of α-Chloroketones. Organic Process Research & Development, 23(7), 1359–1368. https://doi.org/10.1021/acs.oprd.9b00115
連続晶析におけるMSMPR反応容器としてのOptiMaxの使用
著者らは、全自動の断続的フロー液-液鈴木カップリングを可能にする系の開発に加えて、バッチ金属処理と連続晶析の対処について報告しています。連続晶析では、複数のOptiMaxリアクターをMSMPR(Multistage Mixed Suspension and Mixed Product Removal)容器として連結させて使用し、室温での貧溶媒晶析を行いました。
これらのMSMPR容器は、生成物の結晶を含むスラリーを生成し、輸送するCSTRとして機能します。著者らは、晶析装置の内容積を流入流量で割ることによって晶析装置内の名目上の滞留時間を計算しています。FBRM技術に基づくParticleTrackと全反射測定法(ATR)を含むPATを連続晶析の測定に使用しました。
Cole, K. P., Campbell, B. M., Forst, M. B., McClary Groh, J., Hess, M., Johnson, M. D., Miller, R. D., Mitchell, D., Polster, C. S., Reizman, B. J., & Rosemeyer, M. (2016). An Automated Intermittent Flow Approach to Continuous Suzuki Coupling. Organic Process Research & Development, 20(4), 820–830. https://doi.org/10.1021/acs.oprd.6b00030
ReactIRとParticleTrackによるPATに関する情報とフィードバックの提供
著者らは、インラインFTIR/FBRMセンサをプロセス分析技術として組み込んだ結合型PFR-CSTRカスケードフローリアクターシステムの開発について報告しています。このシステムを使用して複数の連続反応晶析について調べ、結晶形状、結晶粒度分布、反応、晶析収率、過飽和レベルを確認しました。PFR、CSTRカスケード、PFR-CSTRカスケードの滞留時間分布(RTD)を測定したところ、結合型PFR-CSTRカスケードの方がCSTRカスケード単独よりもわずかに長いRTDを示しました。反応晶析では、PFR-CSTRカスケードシステムの方が高い収率が得られました。これは、PFRの方がRTDが狭く、未反応物質と不純物の形成のいずれも最小限に抑えられるからです。
ReactIR/ParticleTrackセンサによって反応晶析プロセスでの反応物質の濃度と結晶コード長を測定しました。ReactIRで測定した母液中の反応物質の濃度は、HPLCの結果と良好な一致を示しました(予測誤差<0.17%)。ParticleTrackによる測定で、約150 µmの比較的安定したコード長が明らかになりました。
Hu, C., Shores, B. T., Derech, R. A., Testa, C. J., Hermant, P., Wu, W., Shvedova, K., Ramnath, A., Al Ismaili, L. Q., Su, Q., Sayin, R., Born, S. C., Takizawa, B., O’Connor, T. F., Yang, X., Ramanujam, S., & Mascia, S. (2020). Continuous reactive crystallization of an API in PFR-CSTR cascade with in-line PATs. Reaction Chemistry & Engineering, 5(10), 1950–1962. https://doi.org/10.1039/d0re00216j
連続槽型反応器(CSTR)は、化学反応に使用する容器です。反応に必要な物質を流入させると同時に、生成物を流出させることができます。このため、化学薬品を連続的に製造するための優れたツールとなります。CSTRリアクターは物質を適切に混合し、安定した条件下で一貫して機能します。通常、流出する混合物は内容物と同じですが、これは物質が容器内にある時間と反応速度によって異なります。
反応が遅すぎる場合や、2つの異なる液体が存在しているために高い攪拌速度が必要となる場合など、特定のケースでは、複数のCSTRを接続してカスケードを作成することができます。CSTRは、プラグフローリアクター(PFR)とは反対の理想的な逆混合を想定しています。
いいえ。CSTR(連続槽型反応器)はバッチリアクターではありません。CSTRとバッチリアクターの主な違いは、CSTRは連続フローリアクターであり、反応物質がリアクターに連続的に供給されて、生成物が連続的に除去されるのに対し、バッチリアクターでは、固定量の反応物質がリアクターに添加され、反応が完了してから生成物が除去される点にあります。
CSTRでは、アジテーターまたは攪拌モーター を使用して反応物質を連続的に混合することで、反応混合物が均一になり十分に混合されるようにします。
CSTRは、製造の需要を満たすために反応物質の連続供給が必要となる大規模な産業プロセスで頻繁に使用されます。一方、バッチリアクターは、試験や分析に必要な反応物質の量が少ないラボスケールの実験や、少量の医薬品、農薬、特殊化学品の製造で使用することが一般的です。
PFR(プラグフローリアクター)とCSTR(連続槽型反応器)は、産業環境やラボ環境で使用される一般的な2種類の化学リアクターです。これら2つのリアクターの主な違いは、操作方法とアプリケーションです。
全体として、PFRとCSTRのどちらを選択するかは、実行する具体的な反応と目的の製造結果によって異なります。高品質のラボデータは反応の特性評価に非常に貴重であり、プロセスモデリングはリアクターの選定に役立ちます。CSTRとPFRの比較について詳しくは、こちらをご覧ください。
連続フロー(CSTR)とPFR(プラグフロー)のどちらが特定のアプリケーションに適しているかは、実行する具体的な反応と目的の結果によって異なります。ただし一般的には、次のようないくつかの理由から、CSTRがPFRよりも好まれることがよくあります。
全体として、CSTRとPFRのどちらを選択するかは、実施する反応に固有のニーズによって異なり、どちらのリアクターにも利点と欠点があります。しかし、多くの場合、CSTRはその柔軟性、良好な混合、短い滞留時間で高い反応率を達成できることにより好まれています。