正確で高精度なpH測定をおこなうには、信頼できる機器と電極が欠かせません。最適な測定結果の実現と機器の長期寿命を実現するのに不可欠な、適切な機器の選択、取り扱い、保管方法を詳しくご紹介します。 |
pH測定ガイド - ラボpHアプリケーションのセオリー
このpHセオリーガイドはラボとフィールド環境でpHを測定する方法を明瞭かつ具体的に説明しています。重要な点に対しては多くのヒントとコツが示され、測定全体の説明は酸性度とアルカリ度測定の理論的説明により後で確認を行います。さまざまな種類のpH電極や、特定のサンプルの場合、適切な電極を選択するための基準にも注意が払われます。
目次
- pHの紹介
- 電極の選定と取り扱い
- pH測定のトラブルシューティングガイド
- 包括的なpHセオリー
pHセオリーガイドのプレビュー
1. pHの概要
お酢のような日ごろから使われている液体が酸性と分類されているのはなぜか?それは、お酢には多量のヒドロニウムイオン(H3O+)が含まれるからである。一方、多くの水酸化物イオン(OH-)を含む液体は塩基性、つまりアルカリ性になる。純水中では、ヒドロニウムイオンはすべて水酸化物イオンによって中和され中性になる。
H3O+ + OH– ↔ 2 H2O
図1: 酸と塩基の反応による水の分子合成
解離する分子が水素イオン(または陽子)を放出する物質を酸と呼び、その溶液は酸性となる。よく知られている酸には、塩酸、硫酸、酢酸(または酢)が挙げられる。酢酸分子の解離は、以下のように表される:
CH3COOH + H2O ↔ CH3COO– + H3O+
図2: 酢酸の解離
すべての酸性水溶液が同じ強さを持っているわけではない。酸性の度合いは、溶液中の水素イオンの総数によって決定される。そしてpHの値は水素イオン濃度の負の対数として定義されている。(厳密には、水素イオンの活量によって決定する。水素イオンの活量についての詳細情報は4.2章を参照。)
pH = –log [H3O+]
図3: 水素イオン濃度からpHの値を算出する公式
pHの測定をすれば、酸性物質とアルカリ性物質の量的差異を知ることができる。日用品や化学薬品のpHの値の例を図4に示す。
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1.1. 酸性とアルカリ性
1.2. なぜpHを測定するのか?
1.3. pH測定に必要なもの
a) pH電極
b) 比較電極
c) 複合電極
1.4. 正しいpH測定のための実用ガイド
a) サンプルの準備
b) 校正
c) pH電極
d) 想定される測定精度
1.5 pH測定の手順
2. 電極の選択と取り扱い
最適な条件でのpH測定を可能にするためには、まず最初に正しい電極を選ぶ必要がある。
最も考慮すべき重要なサンプルの性質や条件は、化学組成、均一性(混ざり方)、温度、pHの範囲、容器のサイズ(長さと幅の制限)である。特に、一般的な通常のガラス電極に悪影響を及ぼしやすい非水性、低導電性、高蛋白、粘性の強いサンプルの測定には、電極の選択が非常に重要となる。
電極の反応時間と正確さは、さまざまな要因に依存する。極端なpHの値や温度、または低導電性のサンプル測定は、室温、および中性で測定するよりも時間がかかるのである。
種類の違うサンプルへの対応方法について、いくつかの電極の特性をもとに以下に示す。この章でも主に複合pH電極について説明する。
a) セラミック液絡部
pH電極の比較部には、サンプルとの接触を保持するための開口部があり、これにはいくつかの異なるタイプがある。これらは、さまざまなサンプルの測定において電極に求められる数々の条件に対応するために、時間とともに徐々に改善され進化してきた。最も「標準的」な液絡部は、セラミック液絡部(または、セラミックジャンクション)として知られている。この液絡部は、電極のガラスシャフトに埋め込まれた多孔性のセラミック材でできている。この多孔性セラミックは、比較電解液が電極から大量に流出することなくゆっくりと流出することを可能にしている。このような液絡部は、標準的な水溶液の測定に大変適している。メトラー・トレドのInLab®Routine Proはこのセラミックを液絡部に持つ電極の一例である。この液絡部の構造の概略を以下の図14に示す。
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2.1. 液絡部の種類
a) セラミック液絡部
b) スリーブ型液絡部/すりガラス製液絡部
c) オープンジャンクション
2.2. 比較電極と電解質
2.3. ガラス膜の種類と形
2.4. 特殊な用途向けのpH電極
簡単なサンプル
汚いサンプル
乳液
半固体、固体サンプル
平面のサンプルと微量サンプル
少量サンプルや特殊な容器
InLab®Power (Pro)
2.5. 電極のメンテナンス
2.6. 電極の保管
短期の保管
長期の保管
外部温度センサ
2.7. 電極の洗浄
硫化銀(Ag2S)による目詰まり
塩化銀(AgCl)による目詰まり
蛋白質による目詰まり
その他の液絡部の目詰まり
2.8. 電極の再生と寿命
2.9. その他の情報
3. pH測定のトラブルシューティングガイド
pH測定中に起きる問題の原因には、メーター、ケーブルと電極、校正標準液、測定温度、サンプル(アプリケーション)など、さまざまなことが考えられる。問題となっている現象は、原因の特定に役立つため、しっかりと認識する必要がある。以下の表は、現象と原因の概要を示している。
測定値が高すぎる/低すぎる、測定値が表示されない “---”
- メーター、ケーブル、電極、校正手順、サンプル温度を確かめる
値が変わらない
- メーター、ケーブル、電極を確かめる
反応が遅い
- 電極とサンプル/アプリケーションを確かめる
校正後にオフセットが高い
- 電極、標準液、校正手順を確かめる
校正後にスロープが低い
- 電極、標準液、校正手順を確かめる
校正エラー
- メーター、ケーブル、電極、標準液、校正手順を確かめる
測定値のドリフト
- 電極とサンプル/アプリケーションを確かめる
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3.1. メーターとケーブルの確認
3.2. サンプル温度とアプリケーションの確認
3.3. 標準液と校正手順の確認
標準液の使用に関して留意すること
3.4. 電極の確認
4. pH測定の理論
これまでの章では、pH測定の実践的な面を記述してきた。この章では、読者がpHに対する基礎理解を深めていけるようpH測定の理論を主に取り上げる。
まず最初に基本的なpH理論について取り上げ、続いてセンサの理論、最後にいくつかの特殊なトピックについて話を進める。
4.1. pHの定義
ソレンセン(Sørensen)によると、pHはH3O+イオン濃度の負の常用対数値として定義される。:
pH = –log [H3O+]
この等式から、H3O+イオン濃度が10の「べき数」で変われば、pHは一単位変化することが分かる。これは、サンプルのごく小さなpHの変化まで測定することがいかに重要であるかを示している。
pHの理論はしばしば、水素イオン(H+)がpHの値と関連して述べられるが、正確には参照すべきイオンは、ヒドロニウムイオン(H3O+)(IUPAC名:オキソニウムイオン)である。
H+ + H2O ↔ H3O+
酸や塩基だけがヒドロニウムイオンと水酸化物イオンを形成する解離現象を見せるわけではなく、純水もまた解離してヒドロニウムイオンと水酸化物イオンを形成する。
2 H2O ↔ H3O+ + OH–
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4.1. pHの定義 37
4.2. 濃度と活量の相関関係
4.3. 校正標準液・緩衝液
緩衝能力 (ß)
希釈度 (ΔpH)
温度効果 (ΔpH/ΔT)
4.4. pHの測定回路と電位連鎖
pH電極
比較電極
4.5. pH測定時の校正/調整の設定
4.6. pH測定における温度の影響
電極の温度依存性
等温交点
その他の温度による影響
測定サンプルの温度依存
4.7. 特殊なサンプル溶液の場合の現象
アルカリエラー
酸エラー
比較電極用電解液に起こる化学反応
有機媒体