pH測定の基礎
タンパク質が含まれるサンプルのpH測定は難しい事が知られています。タンパク質はpH感応性ガラス膜とセラミック製液絡部の両方を汚染するからです。正確なpH測定値を得るには、ガラス膜と液絡部を最適な状態に維持しなければなりません。
コンテンツ一覧:
- 感応性ガラス膜のタンパク質による汚染
- セラミック製液絡部のタンパク質による目詰まり
- タンパク質汚染を除去する方法
- 適切な電極の選定
1. 感応性ガラス膜のタンパク質による汚染
どのような水溶液中でも、酸はヒドロニウムイオンの形で存在しています。pH電極の感応性膜は、ヒドロニウムイオンを感知し、電位が生じるように特別に設計されています。この電位が測定結果となるpH値に変換されます。電極がヒドロニウムイオンを感知するには、ガラス膜に残留タンパク質などの汚染があってはなりません。ガラス上に汚染があると、ヒドロニウムを感知する表面積が制限され、電極の反応速度を低下させます。
図1:ガラス膜での電位の発生 |
感度が悪い電極は、不便であるだけに留まりません。この電極が接続されているpH計は、時間単位あたりのmV信号の変化に基づいて数学的な終点を検出する必要があります。mV信号の変化は、水溶液中のヒドロニウムと電極の反応により発生するため、タンパク質による汚染はこの値に影響を与え、測定誤差を発生させることがあります。
電極に残留タンパク質がなければ、ヒドロニウムイオン濃度に応じて電位は非常にすばやく変化します。数秒後に、1秒あたりのこの電位変化が小さくなり、pH計の「安定化基準」を下回るまで低下すると、最終的なpH値が得られます。
図2:汚染がない電極と汚染されたセンサの反応時間の比較 汚染がないガラス膜(青)、pH=6.026、終点時間:84秒 汚染されたガラス膜(緑)、pH=6.022、終点時間:374秒 |
2. セラミック製液絡部のタンパク質による目詰まり
電極の感応性ガラス膜と同様に、液絡部もタンパク質汚染の影響を受けます。セラミック製液絡部は、電極先端のガラス膜の上にあります。この液絡部は、電極から内部電解液を流出させるために小孔の構造を持っています。この電解質の流出は、正確なpH測定値を得るためには非常に重要です。安定した比較電位を保障し、測定に不可欠な電気回路をつなぐ役割を持っています。安定した電解質の流出がないと、測定値の誤差を避けることはできません。
内部電解質は濃縮塩溶液です。多くのタンパク質は、塩水にさらされると、沈殿して固体を形成します。サンプル溶液のpH測定中は、塩勾配が形成され、pH電極の液絡部周辺は最大塩濃度になります。このため、電極の液絡部ではタンパク質が沈殿しやすくなります。セラミック製液絡部の小孔にタンパク質が沈殿すると、電解質の流速が低下し、最終的には停止します。この結果、pH測定値の誤差につながります。
3. タンパク質汚染を除去する方法
4. 適切な電極の選定