イオン選択電極ガイド - 理論と実践 |
このイオン選択電極ガイドでは、研究室での実用的なイオン測定方法について説明します。具体的なヒントとコツをご紹介し、測定基礎の理論的な面からの裏付けも行います。ISEの測定や校正、保管や基本的なサンプル調製、またはISE基本業務手順の策定など、Good ISE Practiceに焦点を当てています。
イオン選択電極ガイドでは、以下の項目について説明しています。
- イオン選択電極の紹介と理論的な基礎
- 代表的なアプリケーション例
- 簡単なシステムチェックの実施方法
- Good ISE Practice(サンプル調製、測定と校正、ISE SOPの策定)
- トラブルシューティング
イオン選択電極ガイドのプレビュー
1.ISEにできること
イオン選択電極(ISE)は、サンプル溶液のイオン活量を迅速に直接的に測定するための最新の分析ツールです。適切なイオンメータまたは滴定装置と組み合わせることで、ISEは費用対効果の高い多機能な測定システムになります。ISEは、ほとんどの研究室で馴染みのあるネルンストの式に基づいています。このため、ISEは理解しやすく、多くの場合容易に適用できます。
イオン選択電極は、特定イオンの活量を測定するために使用します。イオンは、水中に溶けている必要があります。サンプルが溶けない場合は、イオンを抽出することもできます。それ以外の場合は、サンプルの色や濁度は測定の妨げになりません。別の分析方法としては、イオンクロマトグラフィー(IC)または滴定があります。ICの場合は、サンプル溶液が透明でなくてはなりません。測定対象のイオン濃度はppmレンジのみに該当することが望ましく、装置もより高額になります。
ISEは一般的な研究室の環境で利用できます。標準的な測定範囲は10-1から10-6mol/Lまでです。温度範囲は、ISEの種類に応じて0℃から50℃または80℃までです。最もよく使用される温度値は20、25、37℃です。許容されるpH範囲は中性で、極端なアルカリ性または酸性のサンプルは避けるようにします。
このような幅広い利用条件により、ISEの用途は化学、製薬分野のサンプル、環境モニタリング、水質試験、食品、植物などの広範な分野に及んでいます。生物学や医療分野ではイオン活量の測定を行うため、ISEが活用されています。
陽イオンのISE
アンモニウム、バリウム、カルシウム、カドミウム、銅、鉛、リチウム、カリウム、銀、ナトリウム
陰イオンのISE
臭化物、塩化物、シアン化物、フッ化物、フッ化ホウ酸塩、ヨー化物、硝酸塩、硫化物、チオシアン酸塩
詳細はイオン選択電極のサブセクションを参照ください – イオン選択電極理論ガイド
1.1 どのような場合にイオン選択電極を使用するか
1.2 イオン選択電極の仕組み
1.3 選択特性
1.4 イオン選択電極の種類
1.5 一般的な測定範囲
1.6 電極の応答
1.7 限界
1.8 測定手順
1.9 測定手順の長所
1.10 低濃度測定方法
2.主な測定対象
イオン選択電極は、幅広い用途に利用されています。測定の目的はさまざまで、研究プロジェクト、教育的なタスク、生産モニタリング、品質管理などがあります。以下に、代表的な業界分野の代表的な用途を紹介します。
農業 | 土壌や植物原料中の硝酸塩/カリウム/カルシウム/塩化物、および化成肥料中の硝酸塩 |
生物医学および臨床医学の研究所 | 血清、血液などの体液中のカルシウム/カリウム/塩化物、および骨格や歯の構造中のフッ化物 |
飲料 | 果汁やビール中のナトリウム/塩化物、果汁中のカリウム、および飲料/茶/ビールなどに含まれるフッ化物 |
化学 | 材料の受け入れ検査、品質管理、廃液モニタリングのためのISE |
洗剤 | 洗剤の効果を調べる場合のカルシウム、バリウム |
教育 | 大学生の化学分析トレーニング(活量係数/濁度/均衡などの実験) |
電気めっき | エッジング槽でのフッ化物/塩化物、および銅 |
環境 | フッ化物/シアン化物/硫化物の汚染モニタリング |
爆発物質 | 爆発物とその燃焼生成物中のフッ化物/塩化物/硝酸塩 |
食品 | 精肉と精肉保存料中の硝酸塩、精肉、鮮魚、乳製品などに含まれるナトリウム/塩化物、牛乳や乳製品中のカルシウム、野菜に含まれる硝酸塩 |
鉱業 | アルミニウム生産従業員の尿中フッ化物モニタリング |
紙とパルプ | パルプ廃液や回収サイクル、廃液中の硫化物/塩化物 |
製薬 | 研究や品質管理用サンプルのフッ化物濃度、その他のISE用途 |
発電 | 廃液中の塩化物/ナトリウム/カルシウム、および核燃料再処理中のフッ化物 |
水 | 飲料水や酒造用水などに含まれるカリウム/ナトリウム/カルシウム、および排水や廃液中の硝酸塩 |
詳細はイオン選択電極のサブセクションを参照ください – イオン選択電極理論ガイド
2.1 各産業分野での代表的なアプリケーション
2.2 各種アプリケーションの例
3.メータ-センサ-溶液システム
迅速で信頼できるイオン濃度測定は、適切な測定システムによって実現できます。各用途に適する正しいシステムを選ぶための5つのステップについてご紹介します。正しいイオンメータの選定から始めましょう。
イオンメータを使用する場合、さまざまなニーズや要件があります。このため、メーカーはそれらに適する複数のメータを用意しています。比較的シンプルなメータは、基本的な用途向けに機能を絞り込んでいます。高性能メータは、増分手法、結果の自動計算を含む内蔵メソッド、コンプライアンス対応、自動化など、多彩な機能を備えています。もう1つの基準は、使用場所です。卓上型メータは研究室内で使用します。現場での使用には、ポータブル型メータをお勧めします。
メトラー・トレドは、幅広いイオン選択センサの、perfectION™シリーズを提供しています。これらは複合センサで、最上位の性能と容易な操作性を特長としています。Click & Clear™液絡部によりサンプルの種類を問いません。測定対象のイオン種が単純な水溶液中にあるかまたは排水のような複雑な基質にあるかを問わず、perfectION™により常に正しい結果を得られます。当社は、以下のperfectION™センサ向けガイドブックを提供しています。
- カルシウム電極(51710842)
- 塩化物電極(51710843)
- 銅電極(51710844)
- シアン化物電極(51710845)
- フッ化物電極(51710846)
- ヨウ化物電極(51710847)
- リード電極(51710848)
- 硝酸塩電極(51710849)
- カリウム電極(51710850)
- 銀/硫化物電極(51710851)
複合イオン選択電極の詳細はこちらから:www.mt.com/perfectION
詳細はイオン選択電極のサブセクションを参照ください – イオン選択電極理論ガイド
3.1 イオンメータの選択
3.2 センサの選定
3.3 溶液の選定
3.4 便利なアクセサリ
3.5 設置、校正、メンテナンス
4. Good ISE Practice
この章では、日常的なISEの使用に役立つヒントや推奨事項について説明します。これらの解説は一般的に普及している取り扱い方法や操作ルールに基づいており、優れた実践レベルに到達できます。最初の項では、ISE測定のサンプル調製を中心に説明します。
ISE測定は液体サンプル中で行います。このため、固体サンプルは溶かす必要があります。多くの場合、測定イオンは抽出できます。溶解、抽出には脱イオン水を使用します。場合により、サンプルは希釈してISEの直線範囲に入れる必要があります。希釈液には脱イオン水を使用します。
詳細はイオン選択電極のサブセクションを参照ください – イオン選択電極理論ガイド
4.1 ISE測定のためのサンプル調製
4.2 ISEの準備手順
4.3 測定と校正 – 攪拌と洗浄
4.4 ISEの種類による実用への影響
4.5 ISEの保管
Good Electrochemistry Practice™ - pH測定のリスクについて
研究室でのpH測定は一般的な分析業務ですが、誤りを引き起こす可能性のある要素が数多くあります。同じことは、導電率、イオン濃度、溶存酸素、酸化還元の測定にもあてはまります。Good Electrochemistry Practice™は、製品のライフサイクル全体を通じたガイドの役割を果たし、潜在的なリスクを探り当て、そのリスクに対処する適切なツールを見つけ、適切な結果を確実に得るために役立ちます。
- 結果の精度の維持
- 規制遵守
- リスクの最小化
- 生産性の向上、コストの削減
- 投資の保護
Good Electrochemistry Practice™の詳細はこちらから:Good Electrochemistry Practice
5.トラブルシューティング
問題が発生した場合は、エラーの原因を特定する為に順序だった手順に従います。測定システムの4つの構成要素を1つずつ厳密にチェックします。メーカーによるデータを参照します。
以前の章で説明した簡単なシステムチェックが、問題を特定して本来のパフォーマンスレベルを取り戻すための最初の手順になります。このガイドには、一般的なイオン選択測定のトラブルシューティング用チェックリストがあり、チェックリストにはメータ、電極、アプリケーション、方法などの説明が含まれています。