生体触媒作用 | 酵素触媒作用

生体触媒作用、つまり酵素触媒作用では、生物活性成分を化学変換の触媒として使用します。生体触媒作用は、無細胞の完全なin vitroから、生細胞培養での発酵媒介プロセスまで、さまざまな環境で発生する主に炭素中心の幅広い反応を促進します。

生体触媒作用は、いくつかの理由から従来の化学触媒作用の有効な代替手段となります。酵素生体触媒反応には次のような特長があります。

• 化学/位置/エナンチオ特異性が高い
• 多くの場合、反応速度が速い
• 化学触媒よりも穏やかな条件で働く
• 金属触媒の無駄、毒性、コストの問題がない
• 化学反応に関連するエネルギー要件が少ない

特定の目的を持つ生体触媒を設計することにより、高温溶媒内での安定性が向上するため、製薬、化学、バイオ燃料、食品業界で生体触媒作用を幅広く採用することができます。

生体触媒作用は、「環境に優しい」持続可能なコスト効率の高い化学製品の製造に関連しています。化学触媒と比較して、生体触媒には化学合成に関して以下のような固有の利点があります。

• 化合物の非常に大きな多様性: 幅広い化学変換に対応するために天然原料や遺伝子操作された原料から取得します
• 生体触媒反応の特異性: 保護基/脱保護基の使用、エナンチオマー混合物の分離、不要な副生成物の除去作業など、従来の一部の有機合成/プロセス戦略が不要になります
• インフラストラクチャと原材料要件の簡素化: 多くの生体触媒プロセスをシングルポット反応で実行できるため、従来の化学触媒に必要な反応ステップがなくなります  

生体触媒作用で使用される酵素には、頻繁に活用される以下のような重要な能力があります。

A）他の生物製剤または小分子の官能基または部位特異的な結合と標的の認識

B）他の生物製剤または小分子の会合または置換の促進

C）イオン輸送を促進する構造的または静電的特性

D）秩序のある状態から無秩序への構造変換、つまりさまざまな触媒活性

E）酵素活性を誘導または抑制するアロステリック修飾または間接的修飾

組み換え生体触媒の改善または変更に関する研究によって、過酷な化学環境での用途が拡大し、反応範囲、酵素の堅牢性、再利用性が向上しています。現在では、 C-C結合、アミド結合の形成、キラルアミンの形成、C-H活性化など、重要な化学変換を実行するために天然の生体触媒や人工的に設計された生体触媒を使用できるようになりました。

生体内変換に使用される酵素は多岐にわたり、食品、製薬、繊維、バイオ燃料、紙、化学薬品、家庭用品など、事実上すべての産業部門に広がっています。ファインケミカル、製薬、また関連する中間体の合成において、生体触媒（酵素触媒または酵素が媒介する触媒）は実現技術として急速に成長しています。酵素は、酸化、還元、付加、脱離など、さまざまな生体内変換に使用できます。 

酵素の6つの主要なクラスとアプリケーション例: 

1. 分子の酸化と還元の触媒作用を行う酸化還元酵素。酸素分子を持つモノオキシゲナーゼ酵素はC-O結合を形成できます。アルコール、ケトン、アルデヒド、アミンを酸化できるように固有の酵素が設計されています。還元では、ケトレダクターゼ（KREDS）とデヒドロゲナーゼによりエナンチオ特異的アルコールの合成が可能です。その他の酵素はC=Nなどの結合を還元し、ニトリルをアミンに変換できます。 

2. 転移酵素は、官能基を1つの分子から別の分子に分子転移させる場合に有効です。キナーゼとホスファターゼ（リン酸の付加と離脱）は分子シグナル伝達カスケード、DNA複製、RNA転写、その他の機能に特に重要です。また、ケトンやアルデヒドからアミンへの変換を立体選択的に実行できる生物学的に重要な転移酵素も数多くあります。

3. 加水分解酵素はさまざまな基質の加水分解の触媒となります。ヌクレアーゼまたはプロテアーゼは多くの部位に機能し、核酸やペプチドのリサイクルに不可欠です。リパーゼ、プロテアーゼ、アシラーゼなどの加水分解酵素はマイケル1,4-付加の触媒として働き、C-C結合や炭素-ヘテロ原子結合の形成に広く使用されています。

4. 脱離酵素は、一般的に二重結合の形成または離脱反応の触媒となります。加水分解酵素による置換反応とは異なり、置換アスパラギン酸やアラニンなどアミノ酸の生成に使用できるC-Nリアーゼと同様に、カルボキシラーゼまたはデカルボキシラーゼ反応は、CO₂の付加や離脱を行う製薬の生体触媒反応で一般的に使用されています。

5. 異性化酵素によって分子内の原子を再配置できます。ラセマーゼなどの異性化酵素は標的キラル炭素で立体化学を反転させ、シス-トランス異性化酵素は、アルケンまたはシクロアルカンのシス-トランス異性体の異性化を触媒します。グルコースイソメラーゼによるグルコースからフルクトースへの変換は、工業用の酵素による生体内変換の代表例です。

6. 連結酵素は、2つの分子を結合して新たな化学結合を作り、大きい分子を形成します。最も重要なアプリケーションの1つとして、組み換えDNA分子の形成におけるDNAリガーゼの使用がありますが、これはエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼを補うものです。

酵素触媒の生成。 一般的に生体触媒用の天然酵素または組み換え酵素は、最初に発酵（ほとんどの場合は細菌を使用）によって合成されますが、酵母培養液に由来することもあります。酵素は、細菌よりも複雑な哺乳類の細胞培養物から生成することもできますが、通常、細菌や酵母では、組み換え生体触媒酵素に必要な折り畳みやある程度の翻訳後修飾を達成するために十分な分子経路が自然に発生します。そのような発酵によって生成された酵素は、通常は細胞構造の溶解やその他の破壊によって回収されて組み換え酵素を放出し、他のバイオ医薬品と同様のプロセスでさらに精製されます。発酵、回収、ダウンストリームの工程にはそれぞれに固有の課題がありますが、これはプロセス分析技術（PAT）を活用することで対応しています。

安定化と固定化。 酵素の固定化は、より安定した活性の高い再利用可能な酵素を得るために使用します。一般的に架橋酵素凝集体（CLEA）は、シリカ、樹脂、PEGなどのポリマー、さらには脂質ナノ粒子（LNP）のような他の複合体など、さまざまな固体基質を使用して形成することができます。一部のフローケミストリーアプリケーション向けに、分析や触媒を目的とした表面増強測定で使用する表面やセンサ上にCLEAを形成することもできます。関連する成分の合成、吸着、結合、その他の会合の課題に加えて、生成物の安定性と調合は、ワクチンの調合やアジュバントの処理と類似したソリューションによって対応します。

生成物の取得と単離。生体触媒作用の後、CLEAは生成物と残留反応物から分離されます。これは、その後リサイクルすることも、その他の方法で保持することもできます。  次に、小分子生成物はろ過またはクロマトグラフィープロセスによって単離されますが、多くのプロセスは晶析メソッドを促進するように進みます。一般的に、大分子生体触媒生成物については従来のダウンストリーム工程のワークフローが継続されます。

遊離、基質結合、または表面固定化酵素の実際の半減期と安定性を理解することが、適切な生体触媒プロトコルの設計に非常に重要になる場合があります。以下の点に注意してください。

• 溶媒 – 多くの天然酵素は有機溶媒内で反応させることが困難です。人工的に設計された酵素や組み換え酵素の特性は絶えず進化を続けており、このため有機溶媒との適合性が向上しています。改変ホスホロアミダイトをオリゴヌクレオチド合成で使用できるなど、現在では組み換え酵素が有機溶媒環境で反応を触媒できるようになりました。
• pH – 一般的に、酵素は狭いpH範囲内（<0.5 pH単位）で最適に機能します。したがって、多くの生体触媒反応を検討する場合にはpH制御がきわめて重要なパラメータとなることが頻繁にあります。ただし、これを手動で制御することは困難です。または手間がかかります。 
• 温度 – 天然酵素とその組み換え酵素は、非常に狭い範囲内の特定の温度で効率的に機能します。温度のずれによって反応速度、生成物の収率、または重要なプロセスの結果が変化します。
• 溶存酸素 – 特に酸化還元反応で重要な、この決定的なプロセスパラメータは、通常は酸素または不活性ガスのスパージまたはヘッドスペース添加により制御します。酸化還元酵素が最高の効率で確実に機能するように、溶存酸素の量とその反応混合物へのマストランスファー（気泡の特性も含む）を最適化することがきわめて重要です。
• 撹拌、流体力学、ガス – 適切な撹拌機器は、特に長期にわたる生体触媒酵素のライフサイクル、フローケミストリーまたは灌流スタイルの実行に大きな影響を与えることがあります。   撹拌の特性評価が不十分な場合は、生体触媒反応を最適にスケールアップできないことがあります。撹拌は、適切なガス分配とマストランスファーにとっても非常に重要です。
• 反応化学量論 – 正しい試薬/酵素比はきわめて重要です。これは、化学リアクターによって自動化され、プロセス開発に組み込まれたPATが支援する実験計画法（DoE）を検討することで決定できます。

生体触媒反応の開発とスケールアップは、使用している特定の生体触媒の特性、基質、補因子、適用される反応条件に左右されます。化学触媒の場合と同様に、この複雑で相互に依存する変数マトリックスは、リアルタイムの分析測定の情報と組み合わせたときに反応変数を慎重に制御することでよく理解できます。ただし、最近のプロセスのプロセス開発、スケールアップ、データ密度の制限の多くは、生体触媒反応を手動で実施し続ける傾向があること関連しており、これが多くの時間とリソースを費やします。手動の操作とは、プロセスの特性評価と技術移転に対する規制と制度上の需要の高まりに対応するめに、バイオリアクターにスタッフを配置し、ほぼ絶え間なく管理、調整、サンプリングを行うという意味です。

生体触媒作用の無人操作はラボ自動化プラットフォームを使用することで可能になります。このプラットフォームは、内蔵センサとプロセス分析技術（PAT）によって継続的に測定される動的反応条件に応答します。自動合成装置プラットフォームは人為的エラーまたは介入を最小限に抑え、実験をスピードアップします。オフラインクロマトグラフィー分析用のモジュール式自動リアクターによるサンプリングと組み合わせることで、すべての重要なプロセスパラメータ（CPP）を重ね表示し、傾向を分析することができます。パラメータ制御データとプロセス分析データはリアルタイムで自動的に記録され、データ管理とアーカイブのために構造化されます。実験変数を減らし、さまざまなリアクタースケールで再現性を向上することにより、証拠に基づくスケールアップをさらに効率化します。

• EasyMax/OptiMax自動リアクターは、温度、pH、撹拌速度、試薬添加など、生体内変換の重要な変数の影響が正確に制御され、有効にモデリング・記録されていることを確認するための重要な役割を果たします。 
• ReactIR/ReactRaman in situ分光技術は、主要な反応中の化学種をリアルタイムで追跡し、測定するうえで有効です。ReactIRは、全細胞などの懸濁粒子の干渉を受けることなく、溶液内の主要な分析対象物を追跡します。
• FBRM技術に基づくParticleTrackは不均一懸濁液の粒径と粒度分布を測定します。EasyViewerは粒子のin situ画像を捕捉し、系の濁度、形状、サイズ、形態、個数、分布に関するリアルタイムの画像分析を実行します。
• EasySamplerによって、オフライン分析の準備で行うサンプルのクエンチや希釈など、化学反応の全自動無人サンプリングが可能になります。

EasyMax自動リアクターは、生体触媒作用のパラメータを最適化し、開発、スケールアップ、実行をサポートするための完全なワークステーションです。  完全に自動化されたこのシステムによって、プロセスパラメータを正確に制御できます。

• 原料の特定、添加速度、温度、撹拌、ヘッドスペース、スパージ、pH測定、滴定など、CPPを制御します
• フーリエ変換赤外分光分析計（FTIR）ReactIR、ラマン分光光度計ReactRaman、リアルタイム粒度分布測定装置ParticleTrack、プローブ型粒子画像解析装置EasyViewer、自動サンプリング装置EasySampler（自動in situリアクターサンプリング）など、生体触媒反応のin situ分析と簡単に統合することができます
• 実験を無人で実施できます。オフライン分析が必要な場合は、インテリジェントな自動サンプリングを行います
• iC解析ソフトウェアを使用すれば、すべての実験と周辺機器の操作を自動的に実行し、管理するだけではなく、すべてのデータを取得し、記録することができます

ReactIRではFTIR分光法を使用し、生体触媒作用の研究で水溶性成分と有機溶媒可溶性成分の両方を測定します。  ReactIRの測定は、懸濁固形物、気泡、またはその他の粒子集団の影響を受けません。

ReactRamanではラマン分光法を使用して、粒子の分子分析と反応分析を行います。

• 容器またはフロープロセスストリーム内で複数の生成物の品質属性をリアルタイムでin situモニタリングします
• サンプリングに関連する遅延を解決します
• プロセスのステップが製品の収率とプロセス効率に与える影響を定量化します
• リアルタイムの意思決定と制御のための有効なデータ分析を提供します
• データが豊富な実験とデジタル化を通じてICH規制ガイドラインをサポートします
• 研究開発から製造へのスケールアップを支援します
• 数ミリリットルから数千リットルまでの体積で500ppmという低い分析対象物濃度を測定します

ParticleTrackは収束ビーム反射測定法（FBRM）技術に基づく光学プローブ型装置です。容器に直接挿入して、変化する粒子サイズとカウントをリアルタイムで追跡します。   ParticleTrackはコード長分布（CLD）測定を使用して粒度分布（PSD）を取得します。

• 実験条件またはパラメータの変化に応じて粒子と粒子構造の連続モニタリングを行います
• 固相粒子合成、酵素の固定化、開裂、関連するプロセスの形態を特性評価します
• 生体触媒作用中の生体触媒生成物のバッチまたは連続性成長を、サンプルを取り出さずにリアルタイムで追跡します
• 核形成、沈殿、多形、その他の系の属性に影響を与える粒子の条件を特性評価します

EasyViewerはプローブ型の粒度分析装置で、容器に直接挿入して粒子の画像を捉えます。  EasyViewerは画像解析を行い、プロセスの時間分解インライン画像から粒子数、粒度分布、形態を測定し、母集団を時間の経過とともに傾向分析することができます。

• 実験条件またはパラメータの変化に応じて粒子と粒子構造の連続モニタリングを行います
• 固相粒子合成、酵素の固定化、開裂、関連するプロセスの形態を特性評価します
• 気泡の特性解析によりマストランスファー（K_La）を測定します
• 晶析中の生体触媒生成物のバッチまたは連続性成長を、サンプルを取り出さずにリアルタイムで追跡します
• 核形成、沈殿、多形、その他の系の属性に影響を与える粒子の条件を特性評価します

ReactIR Provides Insight into Optimizing the Synthesis of the Ester

Allsop, G. L., Carey, J. S., Joshi, S., Leong, P., & Mirata, M. A. (2021). Process Development toward a Pro-Drug of R-Baclofen.  Organic Process Research & Development, 25(1), 136–147

複雑な分子の開発で化学者は多段階合成を簡素化する方法を捜しています。触媒としての、またラセミ化合物を分離するための酵素の使用は十分に確立されています。in situ分析は補完的な技術であり、各合成段階における化学変換と生化学変換の最適化を支援するために非常に有効です。

研究者は、この研究でアルコール乱用障害の治療に使用する薬物、アルバクロフェンプラカルビルを数キログラム単位で合成する方法の開発に関わりました。1つの段階で重要なコハク酸エステル中間体化合物を合成し、その後、このエステルから単一の（S)-エナンチオマーを分離しました。この単一のエナンチオマーを十分に取得するために、2つの異なるアプローチ、分取キラルクロマトグラフィーと酵素による分離について調べました。酵素による分離の方が有利であると判断した後、ポリメタクリレート上に固定化されたC. antartica Aリパーゼ（IMMCALA-T2-150リパーゼ）が、コハク酸エステル中間体を分離するための実行可能な経路を提供することがわかりました。

最初にコハク酸エステルを合成するために、類似したチオ炭酸化合物が塩化スルフリルと反応し、希望のエステルを生成することを確認しました。エステルの収率を最適化し、副生成物を最小限に抑えるためにReactIRを使用しました。in situ FTIRから、チオ炭酸化合物と塩化スルフリルの反応時に熱安定性の低い中間体、クロロギ酸エステル化合物が形成されることがわかりました。この中間体の形成後、分解の前にN-ヒドロキシスクシンイミドを添加し、続けてトリエチルアミンを添加しました。トリエチルアミンの添加は非常に発熱性が高く、これによりクロロギ酸中間体が希望するコハク酸エステルに変化しました。

ReactIR Tracks Key Biocarbonate Concentration

Pesci, L., Gurikov, P., Liese, A., & Kara, S. (2017). Amine-Mediated Enzymatic Carboxylation of Phenols Using CO₂ as Substrate Increases Equilibrium Conversions and Reaction Rates.Biotechnology Journal, 12(12), 1700332

著者らは、ジヒドロキシ安息香酸（デ）カルボキシラーゼ酵素がフェノール類の可逆的位置選択性オルト（脱）カルボキシル化の触媒となること、また対応する化学触媒よりも大幅に低い温度と圧力でカルボキシル化を行い、非常に興味深いことを確認しました。この最新の研究では、ニホンコウジカビ の2,3-ジヒドロキシ安息香酸（デ）カルボキシラーゼがフェノール分子のオルトカルボキシル化を可能にする触媒として機能すること、また、この酵素が、in situでの補助基質CO₂から炭酸水素塩へのアミンが媒介する同時形質転換に関わっていることがわかりました。

著者らは、基質の結合機構と活性化によって実際のカルボキシル化剤が決まるため、補助基質CO₂または炭酸水素塩水和物の特性が酵素によるカルボキシル化において重要であると述べています。この研究では、ダイヤモンドATR挿入プローブを備えたReactIRを使用して炭酸水素塩の形成を追跡しました。この研究の結果として、著者らは、生体触媒によるカテコールのカルボキシル化の反応率と反応速度の両方を大幅に向上する反応条件を確認したことを報告しています。

ReactIR Investigates Oxidative Coupling With Various Substrates and Aids in Optimizing Reaction Conditions

Engelmann, C., Illner, S., & Kragl, U. (2015). Laccase initiated C-C couplings: Various techniques for reaction monitoring.  Process Biochemistry, 50(10), 1591–1599.

著者らは、菌体酵素ラッカーゼ（Novozym 51003）を使用したフェノール化合物の酸化的C-Cカップリングについて報告しています。ラッカーゼは、フェノール、アニリンなどを酸化してキノンにし、O₂を水に還元できることがわかっています。一般にラッカーゼカップリングには選択性がないと考えられているため、著者らは、C-Cカップリングの有効性/選択性を確認するために、さまざまなフェノール基質でのラッカーゼの酸化に関する研究を開始しました。そこで、2,6-置換フェノールの酸化的二量体形成は選択性が高いだけではなく、大幅なスケールアップも可能であることを確認しました。また、得られた2,6-ジイソプロピルフェノール酸化生成物が類似のビフェノール化合物に容易に還元されることを示しました。

この研究では、最初に、ラッカーゼにより開始された酸化中の酸素測定によって標的基質を選択しました。次に、ReactIR（in situ FTIR分光法）を使用して、ラッカーゼにより開始される特定のフェノール基質とのカップリング反応の有効性と選択性を調べ、生成物の収率を最大化するための最適な条件を定義しました。in situ FTIRによる測定から、位置選択性を持つ対称なジキノンが非常にすばやく合成されたことがわかりました。さらに、in situ FTIRにより、ラッカーゼ酸化によって発生する重合のモニタリングが可能になりました。また、FTIR-ATRメソッドは溶質の分析対象物のみを追跡するため、ポリマー沈殿物による測定への干渉はありませんでした。  

• Allsop, G. L., Carey, J. S., Joshi, S., Leong, P., & Mirata, M. A. (2021). Process Development toward a Pro-Drug of R-Baclofen.Organic Process Research & Development, 25(1), 136–147. https://doi.org/10.1021/acs.oprd.0c00491
• Benkovics,T, McIntosh, J.A., Silverman, S. S., Kong, J., Maligres, P., Itoh, T., Yang, H., Huffman, M.A., Verma, D., Pan, W., Ho, H.-I., Vroom, J., Knight, A., Hurtak, J., Morris, W., Strotman, N.A., Murphy, G., Maloney, K.M., & Fier, P.S., “Evolving to an Ideal Synthesis of Molnupiravir, an Investigational Treatment for COVID‐19”, ChemRxiv, Preprint. http://doi.org/10.26434/chemrxiv.13472373.v1
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• Huffman, M. A., Fryszkowska, A., Alvizo, O., Borra-Garske, M., Campos, K. R., Canada, K. A., Devine, P. N., Duan, D., Forstater, J. H., Grosser, S. T., Halsey, H. M., Hughes, G. J., Jo, J., Joyce, L. A., Kolev, J. N., Liang, J., Maloney, K. M., Mann, B. F., Marshall, N. M., … Yang, H. (2019). Design of an in vitro biocatalytic cascade for the manufacture of islatravir.Science, 366(6470), 1255–1259. https://doi.org/10.1126/science.aay8484
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