この融点/滴点・軟化点測定ガイドでは、自動での融点/滴点・軟化点分析の測定原理について説明し、より適切な測定と性能検証に役立つヒントとコツをご紹介します。
材料に対して化学分析とは別に特性評価を行う事で、物理的な分析法により、物質を区別/識別/分類が可能になり、純度などの品質についても情報を得ることができます。
このような観点で、融点や滴点といった物質の熱特性は、有用で取得しやすい情報になります。
- 融点、薬局方融点、熱力学融点、滴点、軟化点の定義と基礎
- 正しいサンプル調製や融点/滴点・軟化点測定に役立つヒントとコツ
- 認証済みの追跡可能な標準物質キットによる性能検証の方法
融点と滴定ガイド
1. はじめに
材料に対して化学分析とは別に特性評価を行う事で、物理的な分析法により、物質を区別/識別/分類が可能になり、純度などの品質についても情報を得ることができます。このような観点で、融点や滴点といった物質の熱特性は、有用で取得しやすい情報になります。融点は、固相が液相に変化する温度です。正確なデータは、同様に重要でしかもより実験的な熱特性、すなわち工業生成物や天然物の滴点または軟化点と関係しています。このような実験的な値は、使用する測定メソッドに依存するため、実用的な標準化された手順を必要とします。しかし、ほぼあらゆる純粋な有機物質または無機物質の正確な熱特性が、複数の一覧表に示されています。
およそ50年にわたり、メトラー・トレドは熱特性である融点/滴点/軟化点を自動で測定する機器ソリューションを提供してまいりました。メトラー・トレドによる最新のコンパクトな熱特性分析装置、融点/滴点用Excellenceシリーズは、革新的なソリューションによって分析ワークフロー全体をサポートします。これらの装置については、融点、滴点、軟化点測定の基礎知識や日常的に役立つ実用的なアプリケーションのヒントとコツとともにこのガイドラインで取り上げます。
2. 融点
- 2.1 一般的な考慮事項
融点の測定は、特に有機物質を対象に、最も古い識別メソッドとテストメソッドの1つです。融点は測定が容易です。また数値的な特性なので、簡単に表にして分類できます。融点は純度に大きく依存するので、物質の品質評価にも使用できます。純粋な結晶物質は、各結晶素材に特有の正確に決まった温度で液状に変わります。同一素材の結晶状態と融解状態は、融点でのみ同時に存在できます。自動融点測定メソッドでは、凝集状態での変化時に現れるこのような現象を利用します。
純粋な物質は厳密に決まった温度で融解する一方、汚染物を含む不純物質では融点の幅が広くなります。汚染された物質の全素材が融解する温度は、通常、純物質の同等の温度よりも低くなります。この現象を融点降下と呼び、これを利用して物質の純度に関する定量的な情報を得られます。 - 2.2 融点自動測定: メトラー・トレドExcellence融点測定装置シリーズ
- 2.3 融点自動測定: 測定原理
- 2.4 薬局方融点
- 2.5 透過光強度曲線
- 2.6 熱力学的融点
3. 正確な融点測定のためのヒントとコツ
- 3.1 機器の校正と調整
融点測定装置により正しい分析結果を得られるようにするには、その測定精度を検証する必要があります。前章では、認証済みの温度計を使用してサンプル温度を直接測定できないことを説明しました。このため、温度を正確にチェックするには、適切な認証済みの温度値をともなう比較物質を使用します。これにより、公差を含む公称値を実際の測定値と比較できます。正しく校正できない場合、つまり測定した温度値がそれぞれの比較物質の認証済み公称値の範囲と一致しない場合、機器を調整する必要があります。
[…] - 3.2 迅速で信頼性の高いサンプル調製: キャピラリ充填ツール
- 3.3 融点キャピラリサンプル調製
- 3.4 サンプル調製:不適切な例
- 3.5 サンプル調製:適切な例
- 3.6 サンプル測定 – ヒントとコツ
- 3.7 融点規格の概要
- 3.8 融点測定結果
4. LabX® PC ソフトウェアによる融点ワークフローのサポート
LabX PCソフトウェアは、分析天びん、密度計、屈折計、滴定装置、さらに融点測定装置MP70/MP90など、メトラー・トレドのほぼあらゆる研究室用測定機器ポートフォリオと統合します。LabXとの統合によって、それぞれの機器で実行する個々の分析ワークフローがLabXで制御されます。分析結果はLabXデータベースに安全に保存され、必要に応じてアーカイブ、または復元できます。メトラー・トレドの測定装置でよく使われるOneClick®インターフェイスなど、統合されたあらゆる機器でLabX独自のインターフェイスをPCから利用できます。LabXは、測定機器やデータ管理の他に、FDAの全規制に適合する総合的な管理システムに基づいて機器のユーザーを管理します。測定タスクのスケジュールを作成し、ラボのスケジュールに従って該当する機器にタスクスケジュールを発行できます。オペレーターは、特定の機器で作業するための適切なユーザー権限を保有します。LabXは、メトラー・トレドの幅広い分析機器でワークフローの効率的な実行をサポートし、ストレージの集約と21CFR part 11に完全に準拠する監査証跡によりデータ管理を容易にします。
- 4.1 LabXによる融点測定ワークフローの統合とサポート
- 4.2 LabXによりサポートされる融点測定スクリーニング
5. 滴点・軟化点決定の基礎
- 5.1 一般的な考慮事項
さまざまな業界分野で重要な原料となる合成物と天然物の両方が、決まった融点を示しません。このような物質には、軟膏、合成/天然樹脂、食用油脂、グリース、蝋、脂肪酸エステル、ポリマー、アスファルト、タールなどが含まれます。これらの物質は温度が上昇すると徐々に軟化し、比較的広い温度範囲で融解します。一般に、滴点または軟化点テストは、そのような物質の特性を熱的に解析できる簡単な方法の1つです。比較可能な結果を確実に得るためには、標準化された試験装置と試験の条件に加えて、適切なサンプル調製が必要です。 - 5.2 自動滴点/軟化点測定: メトラー・トレドExcellence滴点測定装置シリーズ
- 5.3 自動滴点/軟化点測定: 独自の測定原理
- 5.4 ビデオ映像に基づく画像分析による自動滴点測定
- 5.5 ビデオ映像に基づく画像分析による自動軟化点測定
- 5.6 滴点/軟化点測定の国際標準
6. 正確な滴点・軟化点決定のためのヒントとコツ
- 6.1 機器の校正と調整
使用する滴点測定装置が正しく機能しているかチェックする場合、その測定精度を検証する必要があります。この手順は校正と呼ばれます。以下の項では、校正を正しく行うために役立つ便利なヒントとコツをご紹介します。融点測定装置と同様に、滴点測定機器では認証済みの温度計を使用してサンプル温度を直接測定することはできません。そのような測定では、サンプルを融解するために加熱炉から伝わる熱の大部分がサーモ素子を加熱するために使われてしまうので、誤った測定結果になってしまいます。
[…] - 6.2 サンプル調製
- 6.2.1 Excellence滴点測定装置アクセサリボックス
- 6.2.2 効率的で信頼性の高いサンプル調製: サンプル調製ツール
- 6.2.3 Excellence滴点測定装置のサンプルホルダーと規格準拠のカップ
- 6.2.4 固体サンプル
- 6.2.5 潤滑グリース
- 6.2.6 アスファルト、ピッチ
- 6.2.7 樹脂、ロジン
- 6.2.8 蝋
- 6.2.9 液体サンプルまたは測定前に冷却が必要なサンプル
7. 滴点・軟化点の測定結果
- 7.1 DP90 Excellenceによる食用油や油脂の滴点の測定
この表には、メトラー・トレドのDP90 Excellence測定機器で測定した食用油と油脂の滴点テストの結果が示されています。測定された滴点の温度範囲は、-6℃から50℃です。測定結果の評価に使用できる高い繰返し性の値を得るために、各テストは何回か繰返しています。
[…] - 7.2 DP70 Excellenceによる油脂や蝋の滴点の測定
- 7.3 潤滑グリースの滴点
- 7.4 アスファルトの軟化点
- 7.5 樹脂の軟化点
8. MP VPac™による性能検証
- 8.1 すぐに使えるトレーサブルな比較物質のキット
温度校正による性能検証は、融点測定装置でルーチン操作を間違わずに行い測定結果の信頼性を維持するために、推奨されるワークフローです。MP VPacには、40~230℃の設定温度範囲で機器の精度を簡単な方法で検証できるように、密封キャピラリ充填された3種類の認証済み標準物質が用意されています。
サンプルの粉砕や、事前に融点キャピラリの充填を手作業で時間をかけて行う必要はありません。充填済みキャピラリを取り出して、MP機器の加熱炉に挿入するだけです。プログラム済みの校正メソッドを変更せずに直接開始できます。
MP VPacに含まれる3種類の標準物質には、測定の不確かさを含む認証済みの温度値を提示する証明書が付属しています。純度がDSC測定によって定期的にチェックされます。これにより、続けて融点を測定すれば、機器の温度精度と調整の必要性をチェックする信頼性の高い方法となります。
- 8.2 セルフサービス
- 8.3 比較物質