Zhang, Z., Bae, H.Y., Guin, J., Rabalakos, C.,van Gemmeren, M., Leutzsch, M., Klussmann, M. and List, B. (2016). Asymmetric counteranion-directed Lewis acid organocatalysis for the scalable cyanosilylation of aldehydes.Nat. Commun., 7, 12478. DOI: 10.1038/ncomms12478
この記事の筆者は、トリメチルシリルシアニドとキラルジスルホンイミドのプレ触媒を使ってアルデヒドをシアノシリル化するために、不斉ルイス酸有機触媒法を開発したことを報告しています。その高い活性によって、0.05%~0.005%の触媒充填量で効果的に目的のシアノヒドリン生成物を得ることができました。筆者の報告では、水によって可逆的な誘発が可能な触媒の不活性期間が観察されています。この事実をさらに理解するために、in-situ FTIRを用いることでプレ触媒サイクルについての非常に有意義な洞察が得られました。
アルデヒド反応物の濃度をモニタリングするために、1703cm-1のカルボニルバンドの時間的な変化が追跡されました。興味深いことに、一定時間は反応が見られず、その後に変換が極めて急速に進んだのです。筆者は、反応休止期間の原因が反応混合物中の水に関係していると考え、反応混合物に水を適量ずつ加える実験プロトコルではあるものの、触媒活性種の加水分解によって、活性が失われるのは水が原因であることが証明されました。早期に行われた研究では、ジスルホンイミド触媒が存在する状況でシリルケテンアセタールをアルデヒドと反応させましたが、そのときは反応休止期間は観察されませんでした。筆者の見立てでは、これは、シリルケテンアセタールとプレ触媒との反応性が高いことによるもので、瞬時に活性ルイス酸有機触媒が再生成されるためと考えられました。今回の実験でこの仮説を検証するために、触媒量のシリルケテンアセタールを活性剤として使用したところ、反応休止期間が回避されることが判明しました。さらに重ねた実験に基づいて、この記事では反応休止期間を反映したプレ触媒サイクルが提案されています。