融点とは、固体結晶物質の特性の1つで、固相から液相に変化する温度のことです。融点測定は固体結晶材料を特性評価するために最も頻繁に使用される熱分析です。さまざまな産業分野の研究開発、品質管理で、固体結晶物質を識別し、その純度をチェックするために使用されています。
このページでは、融点の基本的な知識とテクニックについて説明します。また、日常作業のための実用的なヒントとコツもご紹介します。
融点とは、固体結晶物質の特性の1つで、固相から液相に変化する温度のことです。融点測定は固体結晶材料を特性評価するために最も頻繁に使用される熱分析です。さまざまな産業分野の研究開発、品質管理で、固体結晶物質を識別し、その純度をチェックするために使用されています。
このページでは、融点の基本的な知識とテクニックについて説明します。また、日常作業のための実用的なヒントとコツもご紹介します。
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融点とは、固体結晶物質の特性の1つで、固相から液相に変化する温度のことです。この現象は、物質が加熱されると発生します。融解プロセスの間、物質に加えられたすべてのエネルギーは融解熱として消費され、温度は一定のままです(右図参照)。相転移の間、物質の2つの物理的相が同時に存在します。
結晶物質は、通常の3次元配列である、結晶格子を形成する微粒子で構成されます。格子内の粒子は格子力によって結合されます。固体結晶物質が加熱されると、粒子がより活動的になり、激しく動き始めて、最終的に粒子間の引力が保持できなくなります。その結果、結晶物質は破壊され、固体材料が融解します。
粒子間の引力が強いほど、それに打ち勝つためにより多くのエネルギーが必要になります。必要なエネルギーが多いほど、融点は高くなります。したがって、結晶性固体の融解温度は、その格子の安定性の指標になります。
融点では、集合状態に変化が生じるだけでなく、他のさまざまな物理的特性も大きく変化します。その中でも変化が顕著なのは、熱力学値、固有の熱容量、エンタルピー、流動特性(容量や粘度など)です。複屈折反射や光透過率の変化などの光学特性も、これに劣らず重要です。他の物理的数値と比較すると、光透過率の変化を測定するのは容易であるため、これを融点検出に利用することができます。
融点では、光透過率に変化があります。他の物理的数値と比較すると、光透過率の変化を測定するのは容易であるため、これを融点検出に利用することができます。粉体の結晶性純物質は結晶相では不透明で、液相では透明になります。光学特性におけるこの顕著な相違点は、融点の測定に利用することができます。キャピラリ内の物質を透過する光の強度を表す透過率と、測定した加熱炉温度の比率を、パーセントで記録します。
固体結晶物質の融点プロセスにはいくつかのステージがあります。崩壊点では、物質はほとんど固体で、融解した部分はごく少量しか含まれません。液化点では、物質の大部分が融解していますが、固体材料もまだいくらか存在します。融解終点では、物質は完全に融解しています。
融点測定は通常、内径約1mmで壁厚0.1~0.2mmの細いガラスキャピラリ管で行われます。細かく粉砕したサンプルをキャピラリ管の充填レベル2~3mmまで入れて、高精度温度計のすぐそばの加熱スタンド(液体槽または金属ブロック)に挿入します。加熱スタンドの温度は、ユーザーがプログラム可能な固定レートで上昇します。融解プロセスは、サンプルの融点を測定するために、視覚的に検査されます。メトラー・トレドのExcellence融点測定装置などの最新の機器では、融点と融解範囲の自動検出と、ビデオカメラによる目視検査が可能です。キャピラリ手法は、日本薬局方や各国の薬局方で、融点測定の標準テクニックとして必要とされています。
メトラー・トレドのExcellence融点測定装置を使用すると、同時に最大6つのキャピラリを測定できます。
融点測定に関する薬局方の要件には、融点装置の設計と測定実行の両方の最小要件が含まれます。
薬局方の要件を簡単にまとめると、次のとおりです。
メトラー・トレドの融点測定装置は、薬局方の要件を完全に満たしています。
国際規格と標準について詳しくは、次をご覧ください。
ステップ1:まず、サンプルをデシケーターで乾燥させる必要があります。次に、少量のサンプルを乳鉢で細かく砕き粉末状にします。
ステップ2:メトラー・トレドの融点測定装置では同時に複数のキャピラリの測定が可能なため、必要な分を準備します。キャピラリ充填ツールは、空のキャピラリを洗濯ばさみ状のグリップでしっかり支えることで、充填作業を容易にします。このツールにより、少量のサンプルでも乳鉢から収集を行いやすくなります。
ステップ3:グリップを外してテーブル上でキャピラリを軽く数回振動させると、少量のサンプルがキャピラリ上部から底部まで移動します。これにより、サンプルがキャピラリ底部にしっかりと詰め込まれます。「振動効果」は物質を密充填し、気泡が含まれるのを防ぎます。
ステップ4:正しい充填高さはキャピラリ充填ツールに彫られた目盛で確認できます。一般的に、充填高さは3mmを超えてはいけません。
融点分析のためのサンプル調製のステップ1 |
融点分析のためのサンプル調製のステップ2a |
融点分析のためのサンプル調製のステップ2b |
融点分析のためのサンプル調製のステップ3 |
融点分析のためのサンプル調製のステップ4 |
適切なサンプル調製に加えて、機器の設定も正確な融点測定のために不可欠です。開始温度、終了温度、昇温速度の正確な選択は、サンプルの温度上昇が速すぎることによる不正確さを防止するために必要です。
予想される融点に近い温度をあらかじめ決定し、そこから融点測定を始めます。開始温度まで、加熱スタンドは急速に予熱されます。開始温度で、キャピラリは加熱炉に入れられ、温度は定義された昇温速度で上昇し始めます。
開始温度を計算するための一般的な式:
開始温度=予想融点 –(5分*昇温速度)
昇温速度は、開始温度から終了温度までの温度上昇の固定速度です。
測定結果は昇温速度に大きく左右され、昇温速度が高ければ高いほど、確認される融点温度も高くなります。
薬局方では、1℃/分の一定の昇温速度を使用します。最高の正確さを達成するために、分解しないサンプルでは0.2℃/分を使用します。分解する物質の場合、5℃/分の昇温速度を使用する必要があります。試験測定では、10℃/分の昇温速度を使用することができます。
測定において到達する最高温度。
終了温度を計算するための一般的な式:
終了温度=予想融点 +(3分*昇温速度)
融点評価には、薬局方融点とサーモ融点という2つのモードがあります。薬局方モードでは、加熱プロセスにおいて加熱炉温度がサンプル温度と異なることを無視します。つまり、サンプル温度ではなく加熱炉温度が測定されます。結果として、薬局方融点は、昇温速度に強く依存します。したがって、測定値は、同じ昇温速度が使用された場合にのみ、比較できます。
一方、サーモ融点は薬局方融点から、熱力学係数「f」と昇温速度の平方根を掛けた数値を引いて求めます。熱力学係数は、経験的に決定された機器固有の係数です。 サーモ融点は、物理的に正しい融点となります。この数値は昇温速度などのパラメータに左右されません。さまざまな物質を実験用セットアップに左右されずに比較できるため、この数値は非常に有用です。
この融点/滴点ガイドでは、自動での融点/滴点分析の測定原理について説明し、より適切な測定と性能検証に役立つヒントとコツをご紹介します。
機器を作動させる前に、測定の正確さを確認することをお勧めします。温度の正確さをチェックするために、厳密に認証された融点を持つ融点標準品を用いて機器を校正します。このようにすることで、公差を含む公称値を実際の測定値と比較できます。
校正に失敗した場合、つまり測定温度値が参照物質ごとに認証された公称値の範囲に一致していない場合は、機器の調整が必要になります。
測定の正確さを確認するには、認証済みの参照物質で定期的に(たとえば1か月ごとに)加熱炉の校正を行うことをお勧めします。
Excellence融点測定装置は、メトラー・トレドの参照物質を使用して調整し、出荷されます。調整の前には、ベンゾフェノン、安息香酸、カフェインによる3点校正が行われます。この調整は、バニリンや硝酸カリウムを用いた校正により検証されます。
測定結果は昇温速度に大きく左右され、昇温速度が高ければ高いほど、確認される融点温度も高くなります。その理由は、技術的な理由から、融点温度が物質内で直接測定されず、加熱ブロックのキャピラリの外側で測定されるためです。したがって、サンプルの温度は加熱炉の温度より遅れます。昇温速度が高いほど、加熱炉内の温度の上昇が速くなり、測定される融点と真の融解温度の差が大きくなります。
加熱速度への依存性により、融点測定値は、同じ速度を使用して測定した場合にのみ、互いに比較できます。
予想される融点に近い温度をあらかじめ決定し、そこから融点測定を始めます。赤い実線はサンプルの温度を表します(下図参照)。融解プロセスの初めでは、サンプルと加熱炉の温度は同じです(サンプルと加熱炉をあらかじめ熱平衡化しておきます)。サンプル温度は加熱炉温度に対して一定の比率で上昇しています。ここで留意すべきなのは、サンプル温度は短いディレイを経て上昇していることですが、これは加熱炉からサンプルへ熱が伝導する時間を要するためです。加熱中、加熱炉温度はサンプル温度よりも常に高い状態にあります。ある1点で、加熱炉の熱がキャプラリ内のサンプルを融解します。サンプル温度はサンプルがすべて融解するまで一定のままです。ここでは、それぞれ異なる加熱炉の温度値をTAとTCとし、融解プロセスのステージである「崩壊点」と「溶解終点」として定義します。キャピラリ内のサンプル温度は、サンプルがすべて融解すると急激に上昇します。この温度は加熱炉温度に対して一定の比率で上昇し、初めと同じようなディレイが見られます。
融点評価には、薬局方融点とサーモ融点という2つのモードがあります。薬局方モードでは、加熱プロセスにおいて加熱炉温度がサンプル温度と異なることを無視します。つまり、サンプル温度ではなく加熱炉温度が測定されます。結果として、薬局方融点は、昇温速度に強く依存します。したがって、測定値は、同じ昇温速度が使用された場合にのみ、比較できます。
一方、サーモ融点は薬局方融点から、熱力学係数「f」と昇温速度の平方根を掛けた数値を引いて求めます。熱力学係数は、経験的に決定された機器固有の係数です。サーモ融点は、物理的に正しい融点となります(下図参照)。この数値は昇温速度などのパラメータに左右されません。さまざまな物質を実験用セットアップに左右されずに比較できるため、この数値は非常に有用です。
2つの物質が同じ温度で融解する場合、混合融点測定により、それらが同一の物質であるかどうかがわかります。2つの成分の混合物の融解温度は、通常、どちらか一方の純粋な成分の融解温度より低くなります。この挙動は融点降下と呼ばれます。
混合融点測定を行う場合、サンプルは、参照物質と1対1の割合で混合されます。サンプルの融点が、参照物質との混合により低下する場合、2つの物質は同一ではありません。混合物の融点が低下しない場合は、サンプルは、追加された参照物質と同一です。
一般的に、サンプル、参照物質、サンプルと参照物質の1対1の混合物の、3つの融点が測定されます。混合融点テクニックを使用できるように、多くの融点測定装置には、少なくとも3つのキャピラリを収容できる加熱ブロックが備えられています。
図1:サンプルと参照物質は同一 |
図2:サンプルと参照物質は異なる |