残留農薬試験 – 正確な標準液の調製

農薬は、不要な植物、動物、微生物（雑草、害獣/害虫、病気と考えられるもの）を除去する、寄せ付けない、または管理するために使用する化学物質です。除草剤、殺虫剤、殺菌剤、抗生剤、消毒剤などの農薬は、収穫量を最大化し、保管時や搬送時に作物を保護するために食品や飼料を含む農産物に日常的に使用されています。そのような製品を摂取することで、人や動物は食べ物に含まれる低レベルの農薬に曝されています。

消費者を守るために、残留農薬は世界中で厳しい法規制により管理されています。最大残留基準（MRL）は、食品や飼料の内部または外部での存在が許可される個々の残留農薬の最大値です。MRLは世界の地域ごとに異なり、他国に製品を輸出している食品メーカーは、輸出先地域のすべてのMRLに個別に対応しなければなりません。

一般的な残留農薬分析プロセスには、残留物の抽出、他の成分を除去するためのクリーンアップ手順、残留農薬量を特定し、測定するための分析手順が含まれます。

通常は、残留農薬は以下のメソッドによって分析します。

• ガスクロマトグラフィー – 質量分析法（GC-MS）：特に複雑なサンプル内の揮発性成分用
• 液体クロマトグラフィー – 質量分析法（LC-MS）：不揮発性成分（熱に不安定な分子）に適切
   

これらの手法を使用した残留農薬分析によって、既知の農薬のマトリックスと比較することでサンプル内の個々の農薬を特定し、定量することができます。最適な結果を得るために、このメソッドには、再現性の高い条件と高品質の参照用標準の使用が必要です。
 

正確な参照用標準の調製が非常に重要な理由

残留農薬の分析は、きわめて正確な溶液が必要な非常に高感度の手順です。したがって、参照用標準の正確な計量と分注に加えて溶媒による希釈が非常に重要です。ピペットとメスフラスコのいずれにも固有の誤差があるため、重量法による溶液調製の方が高いレベルの正確さを達成することができます。

残留農薬分析には、サンプル内に存在する農薬を特定し、定量するために非常に正確な校正用標準液が必要です。このために保存溶液の調製と希釈が必要になり、容量法ではなく重量法によるメソッドを使用することで正確さを大幅に上げることができます。

重量法による標準液の調製について詳しい情報が必要な場合、またはサポートが必要な場合は、メトラー・トレドのエキスパートチームがお手伝いいたします。弊社までお気軽にお問い合わせください。

標準液の調製の条件

多くの場合、残留農薬分析を実施する研究室では、100を超える異なる農薬の試験を日常的に行っています。保存溶液と希釈溶液の両方の調製は慎重に行う必要があるため、これは多くの時間と労力を必要とするプロセスとなっています。多くの場合、農薬の参照溶液は大量に生成し、後で使用できるように保存しておきます。しかし、農薬は、溶媒、保管期間、温度、光、混入物（微量の水を含む）の存在によって徐々に劣化することがあるため、標準液には高い安定性が必要です。安定性の低い、または不安定な農薬の場合は、参照用標準を毎回生成する必要があるため、分析担当者の負担がさらに増えます。

計量と計算

参照用標準は正確に計量する必要があり、使用する天秤は分析プロセスの正確さの要件を満たしていなければなりません。参照用標準の純度を実際の分注重量とともに使用して、溶液の厳密な濃度を確認する必要があります。したがって、計量の正確さだけではなく、各成分の純度を確認するために必要な計算の量によっても分析が複雑化します。

標準とデータのトレーサビリティ

トレーサビリティは、安全性と監査の目的のために重要です。何らかの問題が発生した場合、結果がトレーサブルであれば、問題の原因を特定し、修正することができます。トレーサビリティを確保するためには、個々の計量結果、計算、希釈ステップを細心の注意を払って文書化する必要があります。一般的に、結果は実験ノートに記入し、その後、分析用のスプレッドシートに手作業で入力します。参照用保存溶液、希釈溶液、サンプルの包括的なラベル付けが不可欠です。そのような手作業による文書化手順は人為的エラーのリスクが高く、分析担当者にとって大きな負担になります。研究室では分析レポートを顧客に提供する必要もあります。

メトラー・トレドのExcellenceレベル分析天秤に重量法による自動液体分注モジュールを組み合わせると、非常に正確な標準液を調製することができます。完全なワークフローソリューションとしてLabX^®ソフトウェアと統合し、包括的なデータ処理/サンプル追跡機能を活用します。

エラーの主要な原因の排除

重量法による標準液の調製には固体物質だけではなく溶媒の計量も含まれるため、特定の濃度を正確に高い精度で調製することができます。重量法による溶液の調製に必要な容器は1つだけです。薬包紙、計量ボート、中間風袋容器、メスフラスコは必要ありません。天秤により記録される実際の重量は、目標濃度に達するために必要な溶媒の厳密な量を計算するために使用されます。したがって、重量法による標準液とサンプルの調製によって標準液の調製プロセスの主要なエラーの原因が取り除かれて必要な労力が減り、ばらつきが最小限に抑えられます。

物質の量の最小化

必要な量の参照用標準を分注先容器（クロマトグラフィーのバイアルなど）に直接分注することができます。計算済みの厳密な量の溶媒が分注先容器に自動的に分注されます。少量の溶液を調製できるため、必要な材料の量が減り、コストが削減されて無駄が減り、廃棄物による環境への影響が最小限に抑えられます。

自動的な計算と文書化

自動液体分注システムをLabX研究室用ソフトウェアに接続すると、完全なワークフローソリューションが実現されます。LabXにより天秤のディスプレイにステップごとのSOP手順が表示されます。オペレーターは各ステップを確認する必要があるため、誰でもSOPに厳密に従うことができます。すべてのデータはLabXによって自動的に処理され、一元管理されたデータベースに安全に保存されるため、完全なトレーサビリティが保証されます。分析担当者が参照用標準のIDを入力すると、LabXによって参照用標準スプレッドシートから純度を自動的に検索できます。純度と実際の分注量に基づいて正しい量の溶媒が自動的に標準液に添加され、希望の濃度を作り出すことができます。

簡単なシステム統合

ラベルをカスタマイズして、ユーザーID、サンプルID、実際の濃度、製造日、使用期限を含めることができます。バーコードリーダーを接続すると、サンプルと参照用標準のIDを電子的に読み取ることができます。プリンタを追加するとラベルを自動的に印字できます。インポート/エクスポートオプションによって、既存のネットワーク、データアーカイブ、LIMS、ERP、別の情報管理システムとの双方向のデータ転送が可能になります。手作業の文書化が不要になるため、転記ミスが完全になくなります。

ビデオをご覧になり、自動プロセスでの重量法による液体分注によって参照用標準をさらに正確にする方法をご確認ください。バーコードリーダー、プリンタ、LabXと組み合わせることで手書きの転記が不要になり、すべての計算が自動的に行われてトレーサビリティが確保され、残留農薬分析のための正確な参照用標準の調製に必要な時間と労力が劇的に減少します。

テスティングラボで行う農薬標準の調製は大変な作業です。
何百種類もの異なる農薬保存溶液を定期的に調製する必要があるからです。

標準液の自動調製であれば次のことが可能です。

• 効率アップと物質の使用量削減
• 切り替え時間の削減による結果の迅速な取得
• エラー防止による正確さの向上
• トレーサブルで監査に合格するデータの提供

このアプリケーションノートでは、重量法による自動液体分注システム（XPR自動天秤）とLabXソフトウェアを組み合わせて使用するメリットを、メスフラスコで保存溶液を手作業で調製する伝統的な方法と比較しながら説明します。

食品サンプルは、残留農薬分析前に種類に応じて調製する必要があります。サンプルによっては、均質化または処理を行い、粒径を小さくしなければならないものもあります。食品サンプルを均質化した後は、計量して適切な溶媒で抽出します。優れた分析結果は、常に優れた計量プロセスから始まります。計量は、事実上あらゆる分析手順の最初のステップです。メトラー・トレドのExcellenceレベル上皿天秤は、すばやく正確な結果を提供し、残留農薬分析用のサンプル調製に最適です。

すばやく正確

革新的なSmartPan™計量皿は計量セルへの気流の影響を最小限に抑えるため、標準的な計量皿の最大2倍の速さで結果を取得することができます。SmartPanによるこのきわめて優れた安定性により、最小表示1mgの天秤でさえも標準的な条件であれば風防なしで使用できます。

人間工学的な計量

風防のドアの開閉を絶えず行う必要がないため、プロセスのステップ数が劇的に減少し、プロセスがよりすばやく、より人間工学的になります。オプションのエルゴスタンドを使用すると、天秤の表示部を目の高さに配置できるため、天秤の前で首を長時間過度に曲げる必要がなくなります。

簡単な清掃

こぼれた物質はSmartPanの下のトレイに留まるため、持ち上げて外すだけで簡単に清掃できます。過負荷保護機能と腐食性化学薬品に対する耐性を備えているため、この堅牢な天秤は信頼性の高いサービスを長年にわたって提供します。

自動データ処理

Excellenceレベル天秤をLabXソフトウェアに接続することで、天秤のSOPユーザーガイダンス、自動的な文書化と計算、完全なトレーサビリティ、データの完全性、ユーザー/タスク/機器の一元管理をご活用いただけます。