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トリスを含むサンプルのpH測定方法(日本語版)

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多くの生体サンプルに含まれるトリス緩衝液は、pH測定を困難にします。適切な比較電極が採用されたpH電極を選択することで測定精度を高め、寿命を延ばすことができます。

pH測定の基礎

多くの生体サンプルに含まれるトリス緩衝液は、pH測定を困難にします。内部電解質とトリス塩基の主要成分の反応により、液絡部が目詰まりし、電極の寿命を短縮します。適切な比較電極が採用されたpH電極を選択することで測定精度を高め、寿命を延ばすことができます。

コンテンツ一覧:

  1. 標準の銀/塩化銀比較電極
  2. トリスが含まれるサンプル測定の課題
  3. トリスが含まれるサンプルを測定する方法
  4. ARGENTHAL™ 比較電極
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1. 標準の銀/塩化銀比較電極

すべてのpH測定にはガラス電極と比較電極の2つの電極が必要です。一般的に使用されているpH電極は複合電極と呼ばれており、ガラス電極と比較電極が1本になっています。

図1:複合電極
図1:複合電極

pH測定で最も一般に使用されている比較電極は銀/塩化銀です。通常の銀/塩化銀比較電極は、塩化銀でコーティングされた銀ワイヤと、液絡部を通じてサンプル溶液と接触する比較電解質で構成されています。この構成では、ワイヤから塩化銀が剥がれ落ちないように比較電解質を塩化銀で飽和することが重要です。一定の電位を維持するには、塩化銀が十分に存在する必要があり、液絡部では、イオンが含まれる電解質がサンプルに流出する事が必要です。

2. トリスが含まれるサンプル測定の課題

トリスサンプルの測定には通常の塩化銀比較電極は使用できません。多くの化合物は、銀イオンと結合して大きい分子や沈殿物を生成することがわかっています。実際に、塩化銀自体がそのような沈殿の1つであり、水溶液中の溶解度に限界があります。銀イオンと、生体緩衝液に多く見られるトリス分子との間にも、沈殿物が形成されます。一般的な比較電解質溶液では、銀イオンがサンプルに流出します。サンプルにトリス緩衝液が含まれる場合、銀イオンと反応し沈殿複合体を生成します。この沈殿が形成される場所は、微小な孔を持つセラミック製液絡部です。この沈殿反応が液絡部の孔を詰まらせ、電解質が流れ出ることを妨げます。一度このプロセスが発生すると、比較電解質とサンプル溶液の接触がなくなり電位が生成されなくなります。この結果、不安定で誤差の多いpH測定値になります。

図2 左から右:清浄な液絡部(白い「点」)と汚染された接合部(黒い「点」)
図2 左から右:清浄な液絡部(白い「点」)と汚染された接合部(黒い「点」)
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