熱分析 UserCom 34内容
TAのヒント
- ポリマーの熱分析:第 4 部:サーモセットの TGA、TMA、DMA測定
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- 新開発された交換部品と付属品
アプリケーション
- 鉛筆芯硬度分類のための熱分析
- 塩化コバルトの乾燥挙動
- DMA 剪断測定のためのサンプル調製
- 酸素や水分に敏感な物質の熱重量分析
鉛筆芯硬度分類のための熱分析
鉛筆の芯硬度は従来、品質の観点から製造元によって独自に決められてきました。以下では、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量測定(TGA)による測定の結果に基づいた鉛筆芯の硬度について記述し、同時に熱重量測定–(TGA)における残渣と鉛筆芯硬度との関係を明らかにします。また、DSC カーブによって、鉛筆芯の製造元を特定することが可能となることをご紹介します。
はじめに
鉛筆芯は セルロースなどの物質を添加した粘土、およびグラファイトから構成されています。鉛筆の黒色は組成物であるグラファイトに起因し、他の要素は主として芯の硬度に関係します。
鉛筆芯の製造は、原料の混合によって始まり、芯の幾何学形状を決定する成形過程へと移行します。このとき鉛筆芯の硬度に影響する要素として、焼結が関係します。その際、主にセルロースが化学的に変化して、粘土とグラファイトが組み込まれる骨組みが形成されます。
この骨組みが、粘土とグラファイトの比率と関連しつつ、鉛筆芯の硬度を決定します。さらに、鉛筆芯を蝋、もしくは油に浸すことでその製造過程は完結します。蝋もしくは油が、焼結時に発生した窪みに浸み込むことで、さらに鉛筆芯の硬度を微妙調節することになります。
芯の硬度は 9H…9B までの硬度段階によって表記され、9H が最大の硬度を意味し、9B が最も軟かい仕上がりを意味します。
鉛筆芯硬度の測定は通常、各製造元の社員による筆記試験で行われていますが、統一された規格は現在、存在しません。
これは製造元が専用の測定機器で行う実験についても同様です。これまで 15 年以上にわたり、専門技術家たちで構成される委員会が国際標準化機構(ISO)の下で信頼のおける鉛筆芯硬度確定のテスト方法と関係する規格を作成しようとしてきましたが、現在のところ合意に至ってはいません。
鉛筆芯がセルロースの他に、充填物(粘土、グラファイト)、および蝋と油の滑剤から構成されていることから、鉛筆芯硬度の分類基準のために行った以下の実験は、ポリマーの測定方法に基づいています。また、少量の添加物は無視できます。
なお、ここ数年、セルロースを熱可塑性材料で代替させようとする傾向があり、このような鉛筆芯はシャープペンシルや色鉛筆などで頻繁に見られるようになってきています。これにともない、熱分析による評価法の確立が期待されています。
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塩化コバルトの乾燥挙動
塩化コバルトは青色の吸湿性の物質で、吸湿すると赤みを帯びます。この特徴的な色の変化のために塩化コバルトは湿度インジケータとしてシリカゲルなどの乾燥剤で使用されます。本稿では塩化コバルト六水和物の乾燥挙動を DSC 顕微鏡と TGA を使用して調べます。
はじめに
塩化コバルト、正確には塩化コバルト六水和物(CoCl2・6H2O)はルビー色をした毒性のある塩です。水に溶かせば、紙の上では見えないインクとして使用することができます。その紙を例えば炎で温めると描いたものが青色で浮かび上がります。不思議なことにそれは短時間で再び消えてしまいます。
長い間、ラブレターを書くのにこのインクは人気がありました。塩化コバルト(CoCl2 )は今日では例えばシリカゲル中での湿度インジケータとして、技術的に重要となっています。シリカゲルは無色のアモルファスの二酸化ケイ素でゲル状から固形状のものがあります。
吸湿性が強く、それゆえにしばしば乾燥剤として使用されます。シリカゲルの吸湿具合を示すために、たいてい塩化コバルトが添加されており、これによりシリカゲルは乾燥時に青色を呈します。その塩化コバルトが添加されたシリカゲルは吸湿すると赤くなります。このように赤くなるのは添加された無水の塩化コバルトもまた同様に水を吸収し、ルビー色の塩化コバルト六水和物となるためです。シリカゲルを約 160℃ まで加熱すると水を取り除くことができ、再び乾燥剤として使用することができるようになります。
本稿では CoCl2・6H2O の乾燥をDSC 顕微鏡と TGA を用いて評価します。
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DMA剪断測定のためのサンプル調製
サンプル調製は、DMA 剪断測定のクオリティに大きく影響します。実例に則して重要なポイントについて検討します。
はじめに
DMA 剪断モードにおいて 2 つの同一サンプルを剪断サンプルホルダの 3 枚の剪断プレートの間に挟み込みます。両外側のプレートはクランピングアセンブリに固定させており、真ん中のプレートに振動力が加えられます。
この剪断モードは、さまざまな物理的特性と形態を持つ多様な材料、例えば、軟質エラストマー、硬質複合材、粘液、粉末プラスチックフォイルなどに多面的に適用できます。
サンプル調製の一般的ヒントとして留意する点をご紹介します。
- サンプルの形態
- サンプル作製工具
- 固定および予変形
- 固定具への装着
- 常温より低い温度での測定
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大気と湿気に弱い物質の熱重量分析
酸素や湿度に敏感な 物質を事前に分解させることなく測定を行うためにはどうしたらよいでしょうか?この問題は、グローブボックス内に熱重量分析装置(TGA)を設置することで解決できます。ここでは、どのように実行したのかを最新の研究例をもとに説明します。
はじめに
主な関心事項は薄膜、もしくは1次元および 2 次元のナノ構造を有する物質を蒸着させるために必要な前駆体分子の合成にあり、これは有機金属化学気相成長法(MOCVD法)と呼ばれています。
この技術は1970 年代に開発され、金属、半導体、セラミックスの酸化物や窒化物、または、硬質物質の膜形成のための手法として使われてきました。興味がもたれるのは、2 元系の半導体膜、アンチモン化アルミニウム AlSb、アンチモン化ガリウムGaSb、亜鉛窒化物 Zn3N2 、窒化アルミ二ウム AlN、 炭化チタン TiCで、これらの液体、または固体の前駆体は目的の膜生成に必要な元素組成から成り、有機配位子を通じて結合することで安定化されています。
MOCVD 過程において前駆体はまず、通常 10-3 ~ 1013 mbar の圧力において気化され、その後、基板上で熱分解されます。
そのため、前駆体に求められる特性は分解されずに気化することであり、気相中における温度とその蒸気圧、熱的安定性に関する情報は不可欠です。
特定の(不活性もしくは反応性の)雰囲気下において昇温時に起こるサンプルの重量変化が測定できる熱重量分析(TGA、時に DSC と組み合わせられる。)は、この測定に適しています。
一方で、有機金属前駆体は、通常、酸素や湿度に対して非常に敏感であり、そのことが熱重量測定(TGA)による測定を困難にしています。以下では、酸素、湿度フリーの環境でどのように測定するとよいかを示します。
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