UserCom

熱分析アプリケーションマガジン UserCom 3  (日本語版)

UserCom

UserComは、熱分析に関わる研究者向けのアプリケーションマガジンです。​

熱分析 UserCom 3(日本語版)
熱分析 UserCom 3(日本語版)

熱分析 UserCom 3内容

TAのヒント

  • 未知サンプルの調査

製品情報

  • STARe ソフトウェアV3.10
  • 熱可塑性プラスチックのためのアプリケーション集

アプリケーション

  • TGA850 によるエラストマー解析
  • ADSC による比熱決定の実験パラメータの選択

TGA850 によるエラストマーの解析

はじめに

熱重量解析では、温度プログラムと定義した雰囲気によるサンプル質量の変化を決定します。TG の一次微分、 いわゆる DTG は、サンプルの反応を解釈するために使用されます。エラストマーの主成分の分析においては、古典的な抽出プロセスと主成分の赤外分光分析もしくはガスクロマトグラフィによる定性・定量分析は、もっと洗練された熱重量ゴム分析によって事実上完全に取って代られています。主成分は通常次のように決定されます:

 

1. 揮発性成分.これは室温から約300℃までの間に放出されます。これは主に添加された油その他の可塑剤、水分、残留溶剤、モノマー及びステアリン酸などから構成されます。

2. エラストマー成分.天然ゴム、EPDM などです。窒素雰囲気で通常の昇温速度30K/分で、エラストマー分子の化学構造によって異なりますが 300℃から 550℃までパイロリシスが続きます。

3. カーボンブラック成分.カーボンブラック成分.空気または酸素中(ガスの自動切換!)での燃焼によるものです。

4. 残留物.無機フィラー(及び灰分)。CaCO3 は約800℃でCO2 を失います。化学量論的CaCO3 の含量は重量損失の結果となります。

[…]

ADSC による比熱決定の実験パラメータの選択

はじめに

ADSC[温度変調DSC]は、サンプルの熱容量と熱事象の同時測定を可能にします。ここでは、従来の一般的な 線形の温度プログラムに周期的シグナル、いわゆる「変調」を重ね合せます:

Tp = T0 + b·t + A·sin(t·2· π/p) where

ただし、
Tp
はプログラム温度、
T0 は開始温度、
は昇温速度、
A  は変調の振幅、
t   は時間、p は変調周期です。

エバリュエーションでは示差熱シグナルがcp成分と反応成分(熱事象)に分割されます。ここで問題になるのが、 実験パラメータ(サンプルサイズ、平均昇温速度、変調振幅、変調周期)の「正確な」選択です。

変調周期は、時間分解能を決定して、それとともに基本温度プログラムの平均昇温速度を通してさらに温度範囲の 分解能も決定するので、ここでの狙いは周期をできるだけ短かくすることになります。しかし、DSC ファーネスとサンプルの熱伝導性がいずれも有限なために周期を意のままに縮めることは不可能であり、周期が短すぎると誤った表示を生みます。図1 は、この誤表示が減衰(小さすぎる振幅)と位相シフト (励起シグナルと比較されるタイムシフト)となって現れていることを説明しています。

図 1

 ファーネスの質量が相対的に大きくそれが膨張することを思えば、ファーネスが短いサイクル時間を取扱う能力に 限界があることは直感的に理解しやすいものです。しかし、意外にも典型的なポリマーの範囲の熱伝導性 (0.1~1W/(mK))を有する物質についてその最小必要時間(ミニマルタイム)を決めるのはサンプルであって、DSC の ファーネスではありません。間もなく発表予定の論文[1]で、筆者はかなり単純化した DSC のシミュレーションを 説明しています。このシミュレーションでは、サンプル内の熱輸送を説明する偏微分方程式を有限要素分析法で解きました。図2 はこのシミュレーションの概要を表しています。この研究によって、ポリマーの熱容量を正確に 決定するのに、一般的に 5mg 未満の質量で 2~4 分のサイクルタイムが必要なことが示されました。

[…]

参考資料

[1] B. Schenker, F. Stäger, “Influence of the Heat Conductivity on the cp Determination by Dynamic Methods”, Thermochimica Acta, 1996, submitted for publication

ノウハウ