熱分析 UserCom 13内容
TAのヒント
- TGAカーブの解釈
ニュース
- DMA/SDTA861e
アプリケーション
- 熱重量分析による複合材料の繊維含有量の決定
- TGA/SDTAによる各種モルタル成分の分離挙動の調査
- DSC測定によるポリマーの結晶化度の定量
- DSCによるポリエチレン短鎖分岐分布のキャラクタリゼーション
ヒント
- TMA/SDTA840:測定間の急速降温
熱重量分析による複合材料の繊維含有量の決定
はじめに
有機フィラー・補強材(例、木粉)はプラスチックの靭性を増大します。繊維の添加によって剛性や構造強度を大幅に引上げることができます。その上、ジュート(黄麻)やシサル麻などの天然繊維、合成無機繊維(例、ガラス繊維や炭素繊維)、及びアラミド繊維などの有機繊維は強化の目的で広汎に使用されています。アラミド繊維はポリ-p-フェニレン・テレフタルアミドから成るもので、その高い引張強度と分解温度が約550℃とかなり高いことが著しい特徴になっています。
技術製品向けにガラス繊維強化熱可塑性プラスチックがどんどん使用されています:これは、射出成型や押出成型による加工が可能で優れた機械物性を示します。このことが極めて多様な分野(自動車製造、精密機器、電気工学等)での利用を可能にしています。アラミド繊維で強化した製品の例には、高圧フレキシブル荷重、ベルト、防弾チョッキなどがあります。このような複合材料の品質保証は、主に所望の繊維含有量の確認から構成されます。これは熱重量測定を利用すればきわめて容易に実行できます。以下の2つの例からもそのことが立証されます。熱重量測定(TG)または熱重量分析(TGA)は、制御された雰囲気下で一定速度(通常直線的)で昇温されるサンプルの質量を測定します。ここで説明する例は、窒素中におけるプラスチックの高温熱分解によって生じた質量減少を取扱っています。
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TGA/SDTAによる各種モルタル成分の分離挙動の調査
はじめに
モルタル混合物の鉱物成分は、「反応性バインダー」と「不活性フィラー」の2つのグループに大別することができます。鉱物質バインダーは通常セメントを意味し、この例としてはポルトランドセメントまたはアルミナセメント(高アルミナセメント)、水と混ぜると水和する(硫酸カルシウム)無水物及び/または半水物などがあります。この水和物は、固いマトリックスを形成してモルタルを互いに結合します。珪砂(石英)または炭酸塩を多く含む砂、及び/またはそれらを細かく砕いた粉末がフィラーとして使用されます。それ以外にモルタル成分になるものは、潜在水硬性バインダー、ガラス、軽量フィラー及びセルロースエステルなどの多数の有機添加剤並びに再分散性のある粉末です。
水を加えてよく混ぜるとフレッシュなモルタルができます。モルタルの個々の施工軟度は用途によって異なります。壁面タイルの接着材として使用するときは、せん断強度と粘度を高めにする必要があります。セルフレベリング床工事向けの場合は、ある程度混練物が分離することがあります。モルタルは必ず均質に保つ必要があります。すなわち、粗い鉱物成分が沈降しないようにして、微小成分が溶解・分散している水分が表面に大量に滲み出さないようにしなければなりません。
本論文では、練り上がったばかりのフレッシュなモルタルの分離挙動を、TGA/SDTAを使ってどのように定性的に解析したかについてご説明します。例としては単純なタイル接着用の配合を用いました。
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DSC測定によるポリマー結晶化度の決定
はじめに
多くのポリマーでは、高分子の一部が互いに平行に配向した結晶構造を形成できます。低分子量物質とは違って、ポリマーで達成される結晶化の程度は100%よりもかなり低く、また分子構造によって左右されます。微結晶に加え、これらの物質中では非晶質領域も形成されます。実際には、様々なタイプの分子に可能な運動性によって部分結晶性ポリマーでは2種類の非晶質領域が区別されます。この流動的な非晶質領域は微結晶と微結晶の間に存在します。これはまたガラス転移のステップ高も決定します。微結晶の表面には非晶質構造を示す剛直な非晶質領域が存在します。しかし、その運動性が減少するためにこれはガラス転移には寄与しません(ユーザーコム11を参照)。結晶化が発生する温度、結晶化を迅速に起こす方法と結晶化の到達度はサンプルの分子構造によって異なります。
結晶化において形成される微結晶のサイズは、結晶構造にポリマー鎖がどれほど容易にフィットするかによって異なります。一般にポリマー鎖は、低温になるほど運動性が無くなり、小さな安定性の低い結晶だけを生じます。これらの結晶は低い融点を持っています。分子の運動性は、温度が高くなるほど大きくなるので、より大きく完全な結晶が形成されると融点が高くなります。したがって、部分結晶性ポリマーの融解カーブには、その材料に存在する微結晶の粒径分布に関する情報が含まれています。100%結晶性材料の融解エンタルピー(ΛH f 100%)が既知である場合は、融解ピークの面積からサンプルの結晶化度を計算することができます。表1に、いくつかの完全結晶性ポリマーの融解エンタルピーの一般的な数値を要約します。部分結晶性ポリマーの結晶化度は、DSCによって調べることができます。それを実行するための簡単な方法を以下の論文でご説明します。
材料名 | ∆Hf 100 % (J/g) |
LDPE、低密度ポリエチレン | 293 |
HDPE、高密度ポリエチレン | 293 |
PET、ポリエチレンテレフタレート | 140 |
PP、ポリプロピレン | 207 |
PA6、ナイロン6 | 230 |
PA66、ナイロン66 | 255 |
PTFE、ポリテトラフルオロエチレン | 82 |
表1:各種の熱可塑性プラスチックの融解エンタルピー
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DSCによるポリエチレン短鎖分岐分布のキャラクタリゼーション
はじめに [1 - 9]
本稿中では以下の略語を使用します:
- MMD 分子量分布
- SCBD 短鎖分岐分布
- CB 短鎖分岐
- TREF 溶離結晶性分別法
- SIST 段階的等温分離法
- SSA 連続自己核形成/アニーリング
エチレンと高級αオレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-ペンテン他)のコポリマーの物性は、分子量分布(MMD)と高分子中の短鎖分岐分布(SCBD)が密接に関係しています。
分子量分布とモノマー(または短鎖)の種類及び含量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と核磁気共鳴(MMR)によって決定することができます。SCBDの決定には分別テクニックを使用する必要があります。例えば、分子鎖中のモノマー分布は溶離結晶性分別(TREF)によって決定できます。このテクニックは、溶液中で内部担体上に段階的に結晶化することによって異質なポリエチレン(PE)を分別します。担体の温度は、PE鎖の様々な分子構造の結晶化温度に追随します。このメソッドでは130℃~140℃の高温でポリマーを適切な溶剤に溶かします。それからポリマーの希釈溶液をゆっくりと室温にまで冷却します。その後で温度を段階的に上昇します。それによって生成した留分は、分子構造の特性決定に使用される標準メソッドで分析することができます。TREFの応用は成功してきましたが、この分別テクニックの主な欠点は、比較的コストが高くつくことと実験に時間がかかることです。したがって、結果の精度はTREF分析に及びませんが、それでも複数の研究グループが、示差走査熱量計(DSC)を用いたポリエチレンとαオレフィン・コポリマーの簡単・高速な分析方法の開発に努めてきました。
この研究は、適切な熱処理の後でコポリマーのSCBDを推定するための2つのDSCメソッドを比較します。最初のメソッドは、段階的等温分離手法(SIST)として知られています。これには、TREFテクニックとよく似た一連の融解状態からの等温ステップでのサンプルの冷却による結晶化を通じて、サンプルを段階的に分別することが含まれます。SISTは、もっぱらポリエチレン(PE)に使用されています。これまでのところ、ポリプロピレン(PP)からは有意な結果は得られませんでした。二番目のメソッドは、自己核形成とアニーリングサイクルの重ね合わせに基づくものであり、連続自己核形成/アニーリング(SSA)として知られています。SSAは、SISTよりもごく最近のメソッドであり、ポリエチレンのキャラクタリゼーションにも使用されています。本論文中で、我々は、3種類のポリマーのキャラクタリゼーションについてSISTによる従来型DST融解分析とSSAメソッドを比較します:ホモポリエチレン及びブチル基の比率が異なる2種類のエチレン/1-ヘキセン・コポリマー。
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