熱分析 UserCom 10内容
TAのヒント
- DSC純度の決定
製品情報
- TGA-FTIRインターフェイス
アプリケーション
- TGA-FTIR接続による気密リングの調査研究
- 石油留分の酸化安定性
- モデルフリー反応速度論で反応メカニズムについてどのようなことが分かるか
- モデルフリー反応速度論で反応メカニズムについてどのようなことが分かるか
- DSC測定の観点から見たガラス転位;バート1: 基本原則
- 射出成型した機械部品の膨張係数の決定
- ニ成分状態図
- 熱硬化性材料の架橋と硬化度
TGA-FTIR接続による気密リングの調査研究
熱重盤分析(TGA)は、 きわめて広範囲の物質の温度挙動特性に関する品質保証・品質管理に用いられる十分確立した手法です。 とはいえTGA単独では試料から放出される揮発性物質の組成に関しては何も知ることができません。しかし、TGAとフー リエ変換赤外分光光度計(FTIR)をオンライン接続すれば、定盤的(TGA)分析と定性的(FTIR)分析を同時に実行することが可能です。 この手法によって、 放出される物質を同定して、TGAで検出される重蘊減少ステップとの相関関係を明らかにすることができます。
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石油留分の酸化安定性
はじめに | 酸化誘導温度の決定は、 石油留分の熱安定性を迅速に評価するメソッドの1つです。 このメソッドを安定剤の効果の測定に使うこともできます。さらに、経時変化の過程を調べることもできます。標準化された等温的メソッドは、 しばしば動的メソッドの代りに使用されます(例、 ASTMD5483、 ASTME1858)。 高圧酸素下での分析は、 揮発成分の気化を防いで酸化速度を増大させるので、 それによって測定時間が短縮されます[1、 2]。 | |
サンプル | 以下の石油留分のディ ゼル油:ライト(LGO)、 ライトサイクル(LGGO)、ライトバキューム(LVGO)、 バキュームl(VGOl)、 バキューム2(VG0 2)、バキューム3(VG03)および灯油。 | |
期待される情報 | これら製品の酸素中での安定性に関する比較。 | |
測定パラメータ | 測定セル | DSC27HP / TC15 |
試料容器 | アルミニウム製40µ1容量、 ¢1mm孔リッド | |
DSC測定 | 測定セルを酸素雰囲気下に置いて、 40℃から150℃まで20K/秒で加熱してから、 350℃になるまでSK/秒で加熱し続けます。発熱DSCシグナルがlOmWに達すると、測定は自動的に終了します(燃焼ピ クは重要ではありません)。 | |
雰囲気 | 3MPaの酸素、パージガスなし。 |
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文献
[1] A .T. Riga and G. H. Patterson, Eds., Oxidative Behavior of Materials by Thermoanalytical Techniques, ASTM STP 1326, American Society for Testing and Materials, 1997
[2] H. Kopsch, Thermal Methods in Petroleum Analysis, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim,1995
モデルフリー反応速度論解析で反応メカニズムについてどのようなことが分るか
モデルフリー反応速度論解析は、活性化反応エネルギー(E)を化学反応の転化の関数(a)、すなわちE= f(a)として計算する、等転化計算手法に基づいています。信頼できる予測にとって重要なものは、E= f(a) のバリエーションだけではありませんが、これによって反応機構に関する璽要な結論を引出すことが可能になります[1、2]。たとえば、活性化エネルギーのカーブの形状は、その反応が単純なプロセスであるか複雑なプロセスであるかを端的に示します。単純なプロセスの場合は、E= f(a)は事実上コンスタント(水平線)となります。しかし、熱分析的に測定 された反応のモデルフリー反応速度論解析がコンスタントな活性化エネルギーを示すことはまれです。しかし、その反応がコンスタントな活性化エネルギーに支配されているという事実は、必ずしもそれが1段階反応であることを意味しません。最も蓋然性が高いのは、それが、最も遅い反応段階で律速される多段階反応であるということです。
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文献
[1] S.Vyazovkin, Int. J. Chem. Kinet., 28, 95 (1996).
[2] S.Vyazovkin, C. A. Wight, Annu. Rev. Phys. Chem., 48, 125 (1997)
モデルフリ ー反応速度論を用いた安全性の研究
ヘクセル ・ コンポジット社は、英国ケンブリッジ市ダックスフォー ドを生産拠点とするエポキシ樹脂フォー ミュレーションを製造する会社です。 化学プラントの安全性を確保するには、これらの材料に潜む熱災害の可能性を徹底的に理解することが必要不可欠です。最近、我々は、DSCの反応速度論データの貢献度を評価するプログラムを始めました。特に、我々は、高温保管試験(SPS6)における断熱的挙動の直接測定から得られたデータを用いて、従来のn次の反応 速度論と新しいモデルフリ ー反応速度論(MFK)に茎づく結果を比較してみたいと思いました。
はじめに
安全性研究では、しばしば断熱的条件(最悪のケース)を想定しますが、 そこでは当初低いレベルの発熱エネルギーが反応物を徐々に加温し、それにより反応速度を加速して最後には反応を「暴走」にまで至らしめます。温度は、反応熱を反応物の平均比熱で割った熱景に応じて上昇します。 この温度では、有機物は分解して、ガスと蒸気が発生します。 最大反応速度(TMRまたは記号に)に到達するのに要する時間が大いに重要になります。これは介入時間と呼ばれることがあります。この時間に達する前であれば、まだ制御不能の反応を阻止する介入(すなわち冷却)に成功する可能性があるからです。 断熱的温度上昇曲線(の変曲点)からTMRを読取ることができます。 測定時に選択する断熱開始温度が高ければ、 それだけTMRが短縮されます。
断熱的高温保管試験の実施は、必要なサンプルが大量(最大1kg)であることに加えて、出てくる煙(ヒューム)を環境に安全に処理する特殊な実験設備が必要になるために、DSC測定よりもはるかに困難で費用がかかります。高温保管試験に代わるものがあれば、時間と費用の節約になります。
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DSC測定の観点から見たガラス転位;パート1: 基本原則
はじめに
ガラス転位は、原則として全ての非結晶性物質または半結晶性物質に起りうる現象です。その必要条件は、最低限1つの方向に十分に大きな程度の分子の乱れがあることです。ガラス転移が起るプロセスを説明するために、我々が均ーな液体を扱っているものと単純に仮定します。液体中では、固体中で起きている分子(原子もしくは原子団)の振動と回転に加えて、参加している複数の分子もしくは分子鎖セグメントの協同的な運動または配列が存在します。この協同的単位は、空間と時間の両方に関して変動しやすい一時的なクラスターと見なすことができます。この協同的単位の大きさは、一般的には数ナノメートルです。温度の上昇に伴って、この特性の長さは減少します。もう1つの特徴的な量は、協同的再配列が起きるのに必要な時間です。それは内部緩和時間によって説明することができます。
ガラス転移は、 分子の相互作用の変化に極めて敏感です。試料間の構造上の相違や試料中の変化を決定して特徴づけるために、 ガラス転移の測定を利用することができます。 したがって、 ガラス転移は、材料の熱分析から得られる重要な情報源です。 この連載第1回の紙面では、 結果を解釈する助けになるいくつかの基本原則について考察を加えます。 ガラス転移の実践的側面はいくつかの基本原則について考察を加えます。 ガラス転移の実践的側面は次回UseComのパート2で取上げる予定です。
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射出成型した機械部品の膨張係数の決定
はじめに
ガラス繊維強化樹脂の射出成型によって製造される機械部品の膨張係数は、方向に依存します。ここで調査したサンプルは、ガラス繊維を充填したポリフェニレンサルファイド(PPS)製機械部品(シャフト)です。機械の構造上、軸方向及び半径方向のシャフトの膨張率を知ることが重要でした。この情報はTMA測定によって迅速かつ簡単に得られました。
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ニ成分状態図
はじめに
二成分系混合物の平衡状態にある様々な相の領域は、温度を成分の関数として描いた、いわゆる「二成分状態図」によって説明することができます。固ー液転移を取扱う場合は、「共融融解図」という用語も使われます。二成分系融解図に12種類の異なる基本タイプが存在するのは事実です(例[1]を参照)。しかし、 実際に 我々が頻繁に出くわすのは、 図1で模式的に表されるタイプの二成分状態図を持つ二成分系です。
図1: 固相線の下では、両方の物質が別々の結晶形態の固体状態で存在します。二成分の混合物の温度をゆっくりと上昇すると、サンプルの一部が共融物の融点で融解します。また、この液体混合物相中に は、それが共融物組成の左側であれば純粋なA、-;{;j側であれば純粋なBが固体状態で存在します。さらに加熱すると残りの固相が融解していき最終的にはサンプル全体が、混合物Xaの初期の組成に 対応する温度で完全に融解します。液相線の上に存在する相は1つだけです(均一融解物)。 |
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参考資料
[1] Landolt-Börnstein, Schmelzgleichgewichte , 6th Edition, Volume II/ Part 3, page 1
熱硬化性材料の架橋と硬化度
熱硬化性樹脂(又は熱硬化性プラスチック)は、 その分解温度になるまで剛直さを失わない硬質で非晶質のプラスチックを説明するのに用いられる用語です。それらは緊密な網目状に架橋した高分子から構成されているために、 融解も溶解もできません。
フェノール樹脂とアミノプラスチック、 そしてエポキシ樹脂(EP樹脂)と不飽和ポリエステル樹脂(UP樹脂)が熱硬化性材料の例です。前者が縮合物であるのに対して、 後者は重付加及び重合によって作られるものです。 そのプリカーサー製品が熱硬化性樹脂として知られています。 これらは、 添加剤(硬化剤、 促進剤、 フィラ 等)を加えた後に反応・硬化して熱硬化性樹脂を形成します。
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