この水分率測定ガイドでは、ハロゲン水分計を使用して水分率を確実に測定するために役立つ次のようなトピックについて解説します。
- 水分率測定入門
- 測定原理
- 据付
- 日常点検(校正)
- サンプルの取り扱いと調製
- オーブンでの測定結果に合わせたメソッド開発
- 特別なサンプル(液体、揮発物、プラスチックなど)
- メソッドバリデーション
- 水分率測定技術の比較
- 技術用語集
無料の水分率測定ガイドをダウンロードして、水分率測定の基礎知識とアプリケーションをご確認ください。正しい据付、完璧な操作、迅速な測定についての情報や、信頼できる高精度な測定結果を得るための情報をお役立てください。
要旨
水分率測定入門
水分率測定を確実な方法で迅速に行うことにより、製造プロセスへのいかなる介入も速やかに実施し、製造プロセスが中断することのないようにする必要があります。水分率を測定する迅速で正確な方法の1つは、ハロゲン水分計を使用した熱重量測定法です。この方法では、サンプルを計量し、赤外線ヒーター(ハロゲンランプ)で加熱します。重量の損失が継続的に記録され、既定の基準に達すると乾燥は終了します。水分率は重量の差から自動的に計算されます。
測定原理
ハロゲン水分計は熱重量の原理に従って動作します。そこでは、サンプルの開始重量を記録し、続いてハロゲンヒーターによってサンプルを乾燥し、その間に統合された天秤によってサンプル重量を継続的に記録します。重量における全損失は水分量として解釈されます。ハロゲンヒーターを使用して乾燥させる方法は、赤外線による乾燥メソッドをさらに発展させたものです。加熱モジュールはハロゲンガスが充填されたガラスパイプで構成されています。ハロゲンヒーターは従来の赤外線ヒーターに比べると非常に小さいにも関わらず、最大加熱出力にすばやく到達でき、制御性も非常に優れています。これらのメリットに加えて、サンプルの表面全体に均一に熱が放射されるため、ハロゲンヒーターは反復可能な結果を得るために欠かせません。
対流によってサンプルを加熱し、長期間乾燥させる従来のオーブンとは異なり、ハロゲン水分計のサンプルは、ハロゲンランプから赤外線(熱放射)を吸収し、その結果、非常に急速に加熱します。
据付
水分計を使用した水分率測定は高精度の計量手順に基づいているため、正確さと繰返し性はその機器の設置場所と密接に関連しています。水分計が最適な環境で運用されるようにするため、上記のガイドラインを遵守してください。
日常管理(日常操作と日常点検)
正確な計測結果を得るためには、手入れ、校正間隔、およびメンテナンスに関する以下の情報を遵守する必要があります。
- 定期的に校正(検査)を行い、必要に応じて加熱モジュールを調整することにより、機器の製品寿命全体にわたって一貫した再現可能な熱出力を得ることができます。そのため、計量ユニットおよび加熱モジュールの検査を行う間隔を定義することをお勧めします(リスクに応じて決定)。
- いつでも高品質な水分率測定結果が得られるように、メトラー・トレドはSmartCal™をお勧めします。この独自の温度感応物質は既知の水分率を持ち、1回の検査で機器の総合的な機能を迅速、容易に検証できます。SmartCalを使用した検査では、水分計を使用した定期的な測定を基本としています。詳細については次のSmartCalユーザーガイドをご確認ください: SmartCal水分計検査物質ユーザーガイド
- メトラー・トレドのサービスチームによって行われる年に一度のメンテナンスは、ハロゲン水分計の品質、計測精度および数値の保持を保証します。
サンプルの取り扱いと調製
サンプル採取後に適切に調製することが、繰返し性と信頼性に優れた結果を得るためのもう1つの鍵です。
- 均一な細粒(粒子サイズ)であることを確認してください。
- 必要に応じて、サンプルを細かく砕き、サンプルの表面積を増やしてください。
- この処理によって乾燥時に水分の放出が 容易に、すばやくなります(表面の水分拡散速度が上がる)。
- この段階でサンプルを加熱しないでください。加熱すると調製中に水分が失われます。
- 乳鉢やグラインダー(水冷式)を使用したり、単に切断することなどによって、機械的に押しつぶすこともできます。
オーブン法に匹敵するメソッドの開発
多くの場合、水分率を測定する方法を規定する、法律上の要件、商取引において慣例的に使用されている基準、または物質に対する社内的な指示が存在します。通常は、オーブン法(乾燥減量)またはカールフィッシャー滴定が標準的な測定手順として使用されています。このような場合、ハロゲン水分計を使用しても、標準的な測定手順と同じ結果を得られるようにすること(または基準値からの偏差を明らかにして再現可能にすること)が目標となります。それを実現するためには、乾燥温度、乾燥プログラム、サンプル重量などの設定パラメータや、サンプルの取り扱い方法を調整する必要があります。これをメソッド開発と呼び、前述のパラメータはメソッドを表すものです。
特殊なサンプル
特定のサンプルで水分をすばやく正確に測定するためには、特別な測定手順が必要です。このセクションでは、そのようなサンプルの水分量の測定を最適化する方法について説明しています。
液体サンプル、ならびに水分量が非常に多いサンプル:
- グラスファイバーフィルタを使用する。
- サンプル皿とともにフィルタの重量を差し引き、サンプルをその上に載せる。
- 急速乾燥はきわめて水分率の高いサンプル(30%超)に適する。
- このプロセスでは、測定プロセスを加速するため、目標温度を3分間40%上回る。
- ステップ乾燥を急速乾燥の代替として使用可能。この方法では、昇温の持続時間および設定温度を自由に選択できる。
水分率測定のさまざまな技術のまとめ
水分率を測定するために、さまざまな測定プロセスが開発されています。以下の表に、代表的な測定技術の抜粋およびそれらの測定手順の長所と短所を記述します。
オーブン
原理:
熱重量分析
計測メソッド
対流によりサンプルを加熱します。オーブンでサンプルを既定の時間、一定の温度で乾燥します。乾燥前後に重量を測定します。乾燥前後の重量の差から水分率を算出します。
● よく基準とされる測定手順(過去の経緯からこの測定手順がよく法規定に盛り込まれる)
● 複数サンプルを同時に測定可能
● 大容量サンプルに対応可能
● 測定時間が非常に長い(数時間)
● 水以外の物質が蒸発する可能性あり
● 高度な手作業や計算が必要なので、ミスが起こりやすい
● 製造ラインでの使用には不向き - 分析天秤、デシケーターが必要
原理:
熱重量分析
計測メソッド
ハロゲンヒーターからの赤外線放射によるサンプルの加熱。乾燥プロセス中の継続的な質量測定。乾燥前後の重量の差から水分率を算出します。
● 迅速な測定(通常は5~15分)
● 取り扱いが簡単、手作業による計算が不要
● コンパクトな機器天秤やデシケーターが不要
● 製造ラインでの使用に最適
●水以外の物質も蒸発する可能性あり
原理:
酸化化学反応
計測メソッド
カールフィッシャー試薬(ヨウ素と二酸化硫黄を含有)と水の化学反応を分極センサでモニタリングし、水分含有量を測定します。これは、測定済の試薬を添加するよう両方で実施するか、または電量法で実施する場合は反応がその場で引き出され、印加電流に比例します。
● 水固有の方法。他の溶媒または「水分」を測定しない
● 迅速に測定可能。通常はサンプルあたり0.5~3分
● 2 ppm~100%の水を測定
● コンパクトな機器、自動計算、メトラー・トレドの天秤を接続して結果の完全な計算が可能
● 専用の化学薬品と化学薬品のノウハウが必要
● 完全な水抽出にはサンプル調製が重要な意味を持つ(ホモジナイザー、長い抽出時間)
技術用語
水分(水分率): 熱重量プロセスにおいて、素材の水分とは、加熱中に揮発して素材の質量の低下を生じさせるすべての物質を意味します。これには水に加えて、アルコールや分解生成物が含まれます。熱重量測定法(赤外線、ハロゲン、マイクロ波、オーブンを使用した乾燥)を使用している場合、水と揮発性の高い成分との間で区別が設けられることはありません。
オーブン測定手順: サンプルの水分率を測定する熱重量メソッドです。オーブンでサンプルを既定の時間、一定の温度で乾燥します。乾燥前後の重量の差から水分率を算出します。過去の経緯を背景に、この測定手順が法令に取り入れられることもよくあります(食品法、USPなど)。