この文書では、pH測定でのUSP 791要件について詳しく説明します。また、機器の仕様と使用方法のガイダンス、さらに基準の仕様に適合する方法についてのヒントとコツを、明快にわかりやすく解説しています。さらに本書では、正確さ、繰返し性、信頼性をともなう結果を向上できるように、pHの測定についてのベストプラクティスガイダンス(USP 791の対象外の作業)をご紹介します。
バッファの取り扱いや処分、pH測定の実践方法、電極のメンテナンスと保管、電極の洗浄、電極の再生と寿命などについてのトピックを取り上げています。
1. 要件と手順
2. 課題とその対処方法
3. 使用する機器が測定可能な状態であることを確認する方法
4. まとめ
今後のpH測定でUSP <791>に準拠するには
1. 要件と手順
USP <791>は、pHメータや電極など、pH測定システムの要件を規定しています。これらの要件は、使用する校正や検証基準に影響があります。このセクションでは、いくつかの考慮事項について検討します。
- センサの校正
センサの校正は信頼できるpH分析に欠かせず、生産された製品の信頼性と品質を確保するための基本的な要素でもあります。校正は、目標となる測定値とセンサによる実際の測定値との差を明確化するものとして定義できます。
校正を行うには、既知のpH値を持つ校正用標準液にセンサを浸漬します。USP <791>の規定では、この校正に少なくとも2つの校正用標準液を使用する必要があり、これらの差は4 pH以上である必要があります。さらに、測定対象のサンプルの想定pH値が、使用する校正用標準液の範囲に収まる必要があります。例えば、サンプルでpH 7.45が想定される場合、校正にはpH 7~10.01の範囲の標準液(または同等)を使用する必要があります。
校正を行うことにより電極の傾きを調整し、オフセットを計算して、理論値からの偏差を補正します。これらのデータ処理は、機器が行います。通常pH測定では、センサの「校正」には校正とそれに続く調整の手順が両方とが含まれています。
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- センサの検証
- メータの計算
- 特別な考慮事項:温度測定の正確さ
2. 課題とその対処方法
メトラー・トレドのpHメータ、センサ、標準液は、USP <791>の要件にきわめて正確に準拠するために役立ち、プロセスを迅速かつシンプルにします。
検証の際には、手作業で温度表と比較して合否の基準を調整するときミスが起きる可能性があります。SevenExcellence™メータでは、機器のメモリに表をプログラムすることでミスの可能性を避けることができます。メータは表を自動で参照し、結果を比較して、サンプルが仕様に適合するかどうかを指示します。これを行うには、ワークフローメソッドを使用します。このメソッドは、事前に設定済みのパラメータを使用した一連の分析ステップです。これらのワークフローメソッドでは、装置での操作方法が手順に沿ってガイドされ、適切なSOP(基本業務手順)に従って作業できます。
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3. 使用する機器が測定可能な状態であることを確認する方法
pH測定の信頼性と品質を確保するには、USP 791基準には含まれない各種の測定/メンテナンスの実践が欠かせません。
- 溶液の扱いと廃棄
校正溶液の品質は、有効期限まで、ボトルが未開封の状態でのみ保証されます。以下のヒントとコツに従うことで、センサの校正/検証に容易に合格できるようになり、開封後の校正溶液の効率的な使用や、標準へのコンプライアンス維持につながります。
- 標準液には有効期限があるので、多量を一括注文しないでください。
- ボトルは確実に気密性を保ち、室温で保管してください。
- 使用後のボトルはすぐに蓋を閉じて、汚染物の侵入を避けてください。
- 電極はボトル内で直接校正しないでください。
- ビーカーに移した校正用標準液は再利用しないでください。また校正用に使用した容量の溶液は元のボトルに絶対に入れ直さないでください。
- 可能な限り、1回で使い切りの小袋入りの使いきりタイプを検討してください。
- pH測定の実践
- 電極のメンテナンスと保管
- 電極の洗浄
- 電極の再生と寿命
4. まとめ
USP <791>基準へのコンプライアンスは、製薬業界に関連する多くのアプリケーションで必要になります。その手続きは比較的簡単ですが、各手順でミスが生じるリスクは不正確な結果や監査不合格につながります。このため、その対策が必要になります。
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