Novartis Pharma AG社のSonja Kamptmann氏によるこのホワイトペーパーは、Novartis社の研究者が水添反応や加圧反応において副生成物が生成される要因についていかに理解を深めているのか、その方法を概説したものです。
水添反応は、触媒の種類、触媒の量、溶媒、基質純度、温度、圧力など様々な要因に影響を受けます。Novartis社の研究者の手法は、一度の実験からより多くのデータが得られるように工夫し、最終製品中の遺伝子への毒性がある不純物成物の根本原因を調べることができました。水添反応における副生成物生成のタイミングを厳密に把握することで、正しい反応終点で反応を停止し副生成物の生成を最小限に抑え高収率で生成物を単離するために非常に重要です。
PATツールを組み込むことによってリアルタイムでの反応追跡が可能になりますが、微量な不純物プロファイルに関する重要な情報はこれらの手法では制限があります。HPLC、UPLC、GCなどのオフライン分析は不純物分析の標準的な方法とされていますが、圧力下で行われる水添反応のサンプリングを行うことは、手動によるサンプリング手順を考えると困難です。水添反応での手動サンプリングは手間がかかり、エラーが発生しやすい作業です。標準的は作業としては圧力解放、不活性ガスでのリアクター置換、リアクターの開放、サンプリング、リアクター密閉、リークチェックの実施、不活性ガスによるリアクターの再置換、H2によるリアクターの加圧といった操作となるからです。
一定間隔で分析データを得ることで、Novartis社の研究者は、水添反応の副生成物生成を引き起こす機構と重要な条件を得ることができ合成手法を確立することができました。これまでサンプリングが不可能であった水素化反応全体に定量HPLC測定を加えることで、仮定をすばやく修正し、実際の機構モデルを導くことができました。この結果、正しい意思決定が可能になり、生産性が向上するとともに、高品質の医薬品原薬(API)のプロセス開発で次の目標に達するまでの時間が短縮されました。
この例では、収率、反応速度論、不純物プロファイルの定量測定を可能にする再現性の高いサンプリングを行うために以下の条件下でサンプリングする必要がありました。
- 最大5barの圧力
- 最大80°Cの高温
- ミスなく再現性の高い24時間以上のサンプリング
- 高濃度スラリーでのサンプリング
反応経路を解明するにはさらに実験が必要ですが、最適な反応停止タイミングの情報は得ています。製造スケールで反応停止の条件を正しく理解することで水添反応を適切なタイミングで停止させることができます。高純度で高品質な生成物を得られる最適なタイミングで反応は停止されますが、許容範囲内に入るわずかな副生成物が形成されてしまいます。