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熱分析アプリケーションマガジン UserCom 9 (日本語版)

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UserComは、熱分析に関わる研究者向けのアプリケーションマガジンです。

熱分析 UserCom 9(日本語版)
熱分析 UserCom 9(日本語版)


熱分析 UserCom 9内容

TAのヒント

  • 低温キャリブレーション

製品情報

  • プラチナ、サファイヤ、アルミナ計量試料容
  • TA ポスター
  • 実習キット

アプリケーション

  • ポリ塩化ビニル(PCV)の熱分析
  • DSC、TMA 及び TGA-EGA による総合的分析
  • バターとマーガリンの脂肪分の DSC
  • 重量減少を考慮した TGA/SDTA851eによる DSC
  • ヒトの角質層の DSC

ポリ塩化ビニル(PVC)の熱分析

原則として、熱分析的手法によって PVC のサンプルの重要な物性を 3 点調べることができます。 それは以下の通りです:

  • 熱安定性
  • ガラス転移温度とガラス転移の形態
  • ゲル化度

実験では、2 つの重要な熱分析の手法が使用されます[1]:熱重量分析(TGA)と示差走査熱量分析(DSC)です。

[…]

文献

[1] DIN 51005: Thermische Analyse (TA), Begriffe

DSC、TMA 及び TGA-EGA による総合的分析

プリント回路基板の調査を例に取って、製品の総合的評価を行うために各種の熱分析手法による結果をどのように評価できるか、その方法をご紹介します。

はじめに

プリント回路基板

プリント回路基板(PCB)は、電子部品のプリント回路を支持する役目を果たす絶縁材料シートを説明するのに用いられる用語です。プリント回路基板は、硬化性プラスチック(マトリックスレンジ)をバインダーにして数枚の薄層を重ねてプレスして作られた積層材料です。その最外層は、エッチング処理で不要部分を取り去った後に回路を形成する銅箔から成ります。

「FR2」として知られる樹脂接着紙は、紙を補強材にして作られています。産業用エレクトロニクス向けには、「FR4」として知られる高性能プリント回路基板が使用されます。 これはガラス繊維と、マトリックスレジンとしての特殊エポキシ樹脂から作られます。

プリント回路基板の要件

  • ある程度の構造的剛直性、特に寸法安定性があること。
  • (ハンダ付け温度、作業温度での)熱膨張が少ないこと:プリント回路基板は胃方性であり;長さ(x)、幅(y)、厚さ(z)の 3 方向についてかなり異なる膨張性係数を呈します。
  • 軟化温度が十分高いこと、これは(ガラス転移で)マトリックスレジンが軟化すると、機会物性や電気絶縁性が劣化するためです。
  • 溶融ハンダ温度とその後の工程での蓄熱に耐えられる十分な耐熱性があること。マトリックスレジンの初期分解には必ずガスの発生を伴い、ガスが層を押し広げる(層間剥離)ために積層を破壊してしまいます。
  • 最後に、プリント回路基板は難燃(FR)でなければなりません。高性能「FR4」規格材料は、ブロム化モノマーによる樹脂基本材料(テトラブロム-ビスフェノール A)のために難燃性になっています。このため、加熱すると腐食性分解生成物が発生します。今でも依然として環境に優しい添加物では十分な難燃性を達成することは不可能です。

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バター脂肪分とマーガリンの DSC

はじめに

牛乳から脂肪の数的を機械的にブレンドすることによってバターが作られます。 家庭用バターは約 15%の水分を含有する油中水エマルジョンです。 脱水したバター脂肪分はロースティング用ばかりではなく、食品の製造にも利用されています。 その典型的なバター風味に加えレオロジー上の物性、触感、食品形状もまたその組成の季節的変化の影響を受けます。

主として(グリセリドのような)3 もしくは 4 つの脂肪酸から構成される植物期限の多くの脂肪酸とは異なって、バタ ーには 4 から 24 の炭素原子による約 10 種類の重要な脂肪酸が含まれています。 家畜飼料の季節的な変化に由来する脂肪酸含有量の変更は、バターの結晶性とその物理的性質全般に影響します。例えば下記のバターは冬季のバターよりも(同じ温度で)かなり速く軟化し、それは冬季に冷蔵庫から直接出したバターは、塗るのが難しくなるという理由によるものです。特に食品工業は、標準化したバター脂肪分に大変関心を持っています。それは分別結晶化により生産することができる幾つかの留分に分離されています。 このような特別な製品は、ほんの数例を挙げれば、アイスクリーム、チョコレート及びお菓子の生産のために必要になります。 マーガリンは、植物性脂肪(以前は動物性脂肪も使用)に水を乳化することによって製造されます。

バターとマーガリンの結晶組成は、各種の分析技術を用いて調べることができます:

  • 様々な温度での等温的 NMR*
  • 様々な温度での等温的 X 線回析*v
  • 示差走査熱量分析

*) 通常は 5℃刻みで 0℃から 40℃まで

こうした手法の中で、DSC はほとんどどのような温度プログラム(昇温、冷却または等温)も自動的かつ再現可能な方法で、実行できるために最も重要なものです。結晶化は発熱ピークとして観察され、融解は吸熱ピークとして観察されます。

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重量減少を考慮した TGA/SDTA851e による DSC

熱重量測定セル内の熱流速測定は、熱量の結果に同時測定された質量の変化を考慮に入れることができるようにすべきです。そのために、SDTA シグナルを熱流速カーブ(DSC カーブ)に変換する温度依存調整係数が決定されます。SDTA シグナルは、サンプルから直接測定された温度と、基準[1,2]として働くプログラム温度の温度差になります。

DSC と同じ様に、これは、例えば分解プロセスが発熱もしくは吸熱のいずれであるかを明示するとともに、それに加えて質量の変化を伴わずに相変化や反応が起きる場合も表示します。

転移エンタルピーを測定するもう1 つの方法は、サンプルの比熱容量(Cp)を決定することです[3]。そのときは、サファイヤメソッド[4,5]に従って等温インターバルをおいてCp 測定を実行するのがベターですが、しかしそれでは連続的昇温を中断することになります。

これとは違って、調整カーブならSDTA により様々な昇温速度で温度範囲全域にわたって連続的に直接測定することができるので、何回も測定したりサファイヤと比較したりせずに済みます。

また、この方法では、たとえ質量の変化が起きるときであっても、TGA/SDTA 測定により反応熱と相転移エンタルピーを決定することができます。

 

文献

[1] R. Truttmann, R. Riesen, G. Widmann, J Thermal Analysis, 47 (1996) 259

[2] M. Kelsey, R, Truttmann, American Laboratory, January 1997, 17

[3] ユーザー・コム4 (12/95) 4 項

[4] DIN 51007

[5] ASTM E 1269

 

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ヒトの角質層の DSC


薬物透過と透過の加速

皮膚バリア、すなわちヒト角質層(HSC)を介した薬物の通過が、局部、局所もしくは全身の治療という目的にとって遅くなりすぎることがしばしばあります。この表皮細胞の最外層(厚さ10~15μm)は、脂質マトリックスに埋没した平坦な角質化した死細胞から構成されています。一方、このバリア中の特定薬剤の相溶性を増大すれば透過を加速することが可能です。この機構は、軟膏補形薬(賦形剤)の透過、またはHSC 内の追加透過促進剤を通したものとなります。それに代る方法として、バリア内の薬剤の拡散係数を増加することにより透過を加速することも可能です。


分離したヒトの角質層のDSC 調査

DSC によるHSC 上の透過促進剤の影響の測定DSC を援用して、角質層の骨格構造を変えて透過に影響を与える賦形剤とHSC の構成部分の具体的な相互作用を検出できます[2,3,4]。分離したHSC を調べると、DSC カーブで4 つの主要な吸熱ピークが確認されます。

上述の相互作用は、相転移のピーク位置、ピーク面積及びピーク幅に関する変化をもたらします。 

[…]

 

文献

[1] M. Bach, Dissertation, Düsseldorf (1995)

[2] B. W. Barry, J. Controlled Release 15 (1991) 237-248

[3] J. A. Bouwstra, et al., J. Controlled Release 15 (1991) 209-215

[4] A. J. Windfield, et al., 『経皮的透過の予測』より (R. C. Scott, R. H. Guy and J. Hadgraft, eds.) IBC

Technical Services, London (1990)

 

ノウハウ