熱分析 UserCom 6内容
TAのヒント
- 機器の校正
製品情報
- TWA/SDTA840
- STARe ソフトウェアV5.1
- 食品アプリケーション・ハンドブック
- 製薬アプリケーション・ハンドブック
アプリケーション
- 最新の建築材料(FTIR)
- MaxRes パラメータの選択
- DCS30 による共重合樹脂の調査
- タンパク質の変性
- 水和物の熱分析調査
- ポリエチレンのメモリー効果の調査
- 温度変調 DSC によるガラス転移測定の位 相補正
- ガラス転移における温度変調 DSC
最新の建築材料(FTIR)
今日の建築材料、たとえばタイル接着剤は、セメントと添加物(砂、石灰他)などの古典的な成分ばかりではなく、ディスパージョンの形をしたポリマーといった複雑な混合物から構成されています。これらのポリマー添加物は、建築材料に弾性、接着力、凍結防止性などに関連した要求物性を持たせる働きをしています。
また、このような複雑な配合では、それに応じて多くの品質管理を製造中に行う必要があります。それに加えて、当分野での競争激化に伴って開発をさらに進めて、競合製品と自社製品を比較する必要性が出てきます。.
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MaxRes:イベント制御による昇温速度の調節
概要
今日では、大部分の熱分析測定が予め定義された一定の昇温速度で実行されます。この方式が多いに 成功し幅広く適用されているものの、実験条件[1 - 4]の決定に挙げなければならないサンプルの熱効果などの コンセプトが存在すること、すなわち、分析中に特に昇温速度を調整できる方法が 40 年間知られてきました。本稿では、一定の昇温速度または効果に依存する昇温速度というこれらの 2 方式の基本的な相違点、各々の固有の長所と欠点を説明し、熱重量分析における MaxRes メソッドの例を用いて、有効な実験 パラメータを選択するヒントを提示します[5]。
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参考資料
[1] L. Edrey, F. Paulik, and J. Paulik, Hungarian Patent No. 152 197 (1962)
[2] J. Rouquerol, Bull. Soc. Chim. Fr., (1964), pp 31-32
[3] F. Paulik, Special Trends in Thermal Analysis, John Wiley & Sons, Chichester (1995)
[4] H.G. Wiedemann, D. Nehring, Zeitschrift für anorganische und allgemeine Chemie, 304 (1960) 137
[5] USER COM 4, Information for users of Mettler Toledo thermal analysis systems December 1996, page 4
ポリエチレンのメモリー効果の調査
概要
ポリエチレン試料を一定時間、結晶部分の融解範囲の温度にさらすと結晶構造が変化します。この現象は メモリー効果(「熱メモリー能力」)として知られていて、DSC を使って測定できます。メモリー効果は、熱履歴のない試料の DSC カーブと比較したときに偏差として現れます。
本稿の目的は、こうした偏差の再現性の大きさが温度と処理時間によって変動することを示すことにあります。 したがって、その試料が特定の温度にさらされた時間の長さを決定することが可能です。
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DSC30 による共重合樹脂の調査
はじめに
本稿では、共重合樹脂の結晶化に対する添加剤と酸化分解の影響を調査します。共重合樹脂(コーポリマー)は、価格的に妙味があって物性を容易に変えられるので産業界でおおいに利用されています。成型中に熱可塑性プラスチックは冷却によって溶融状態から結晶化します。このプロセスは、例えば 射出成型等の加工で大きな関心が持たれる非等温結晶化をもたらします。調査対象の材料は PP リッチのポリプロピレン-ポリエチレン(PP-PE)コーポリマー(95 重量%)です。2 つの サンプルA及びBにはREPSOL PPR 1042(メルトインデックス 66.5%、融点 162℃、比重 0.903g/cm3)が含まれています。各種の添加剤を使用しました:
- 酸化防止剤(Tinuvin327、Tinuvin 770、Tinuvin 770-DF、Kronos CL220、Irganox BZ15)
- 紫外線安定剤(Quimasorb144 と Quimasorb944)
- 顔料(Iagacolor10401、Elf Tex415、Cromoftal DPP-BO、Cinquasia RPT891D)
融解熱と結晶化度を測定するために DSC を使用します。共重合樹脂の結晶化の反応速度論及び 融解温度に対する添加剤の影響については、以前の研究ですでに調査しました[1]。
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参考資料
[1] J.J. Suñol, J. Saurina, D. Herreros, P. Pagès, F. Carrasco, „Análisis calorimétricø de copolímeros de base polipropileno-polietileno“ Afinidad 1996, submitted for puplication.
タンパク質の変性
脂肪と炭水化物に加えて、アミノ酸から構成される長鎖分子であるタンパク質も最も重要な食品成分の 1 つです。使用されたプロセスパラメータによって異なりますが、タンパク質の加工には変性が伴うことが あります。この変性の程度が保水力、乳化性等、その後の物性に影響するので、プロセス制御にとって 重要になります。以下の例で示されるように、変性は DSC によって簡単に測定できます。
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水和物の熱分析的調査
製薬産業で使用される多くの物質は、いわゆる水和物または溶媒和物の形態をとることができます。 その中では水は、単に水分として表面に存在するだけではなく、結晶中に永久的に結合されています。 この物性は擬似多形性として知られ、通常このような水和物に見られるかなり複雑な融解挙動をもたらしています。DSC と TGA の組合わせを用いて完全なキャラクタリゼーションを行うことができます。
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ガラス転移の温度変調 DSC 測定における位相補正
温度変調型示差走査熱量計(ADSC)では、温度は、時間の関数として周期的に変化し、基本的に一定の 昇温速度に重ね合わせられます。
Schawe[1]は、この手法を用いて得られたデータは、以下の式で定義される、同位相熱容量(Cp')と位相遅れ熱容量(Cp")による複素熱容量(Cp*)とするのが最も良い解釈であると 提案しています:
|Cp*| = AHF / Aq (1)
同位相の熱容量:
Cp' = |Cp*| cos φ (2)
位相遅れの熱容量:
Cp" = |Cp*| sin φ (3)
ただし、ここではAHFは熱流束変調の振幅、Aqは昇温速度の変調の振幅、φは位相角です。位相角は、 メトラー・トレドSTAReソフトウェア内部では、負の量として定義されていますが、これは熱流束変調が昇温速度変調よりも遅れることを示しているので直感的に好ましいことです。
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[1] J. E. K. Schawe, Thermochim. Acta, 260 (1995) 1
ガラス転移領域における温度変調 DSC
現在では、ADSCのガラス転移への応用は、複素比熱Cp*、その同位相成分Cp'と位相遅れ成分Cp"、 並びに昇温速度と熱流束のあいだの位相角に関して正当に理解されるようになってきました。例えば、 分子運動のタイムスケールがADSC変調の周期とほぼ等しくなる温度範囲において|Cp*|及びCp'における 「ステップの変化」が起きます。それより低い温度では、分子のタイムスケールが周期よりもかなり長いので 、その応答はガラス質となりガラスの値に対応するCp値になります;他方、それより高い温度では、分子の タイムスケールが周期よりもかなり短いので、その応答は液体のようになり液体の値に対応するCp値を示します。明らかに、この「ステップの変化」が起きる温度は、選択した変調の周期によって左右されます;周期が短くなるほど、この転移が起きる温度は高くなります。
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[1] J.M. Hutchinson and S. Montserrat, J. Thermal Anal, 47, 103 (1996)
[2] J.M. Hutchinson and S. Monserrat, Thermochim. Acta, 286, 263 (1996)
[3] J.M. Hutchinson and S. Monserrat, Thermochim. Acta, in press (1996)