熱分析 UserCom 46内容
TAのヒント
TGA-MS、実用的な導入方法、Part 2 : TGA-MS
ニュース
- Flash DSC 2+
- 高速走査熱量測定に関する新刊本
- マイクロ GC/MS
アプリケーション
- DSCとTGA/DSCによる金属のDSC測定
- DSCによる粉末の熱伝導率測定
- 包装材の水蒸気透過性の判定
- 重複効果を分離するための戦略 パート2: TGA
- これまで不明なメントール多形体のFlash DSCによる証明
- TGA/DSC-FTIR による不明なポリマー試料の分析
DSCとTGA/DSCによる金属のDSC測定
DSC測定は、従来のDSC機器を使っておよそ700°Cまで実施できます。これよりも高温の測定が必要な場合は、TGA/DSCを用いてDSC曲線を1600°Cまで測定することができます。本記事はDSCとTGA/DSCの測定を比較し、高温領域においてどのように定量的熱量測定が可能かについて説明します。
はじめに
熱分析メソッドは、金属分析のために19世紀末から用いられてきました。昇温速度と冷却速度を制御した最初の測定は、示差熱分析(DTA)によって行われました。このメソッドでは転移温度を特定できます。ただし、転移エンタルピーや比熱容量などの定量的な熱力学的量の測定には熱量計が必要です。
熱分析メソッドは、金属分析のために19世紀末から用いられてきました。昇温速度と冷却速度を制御した最初の測定は、示差熱分析(DTA)によって行われました。
低~中温度では、従来のDSCを用いて十分な精度を得ることができます。700°Cを超えるDSC測定は、同時熱分析(TGA/DSC)と適切なセンサを用いて実施できます。このテクニックでは、室温から1600°Cまで測定できます。
本記事ではDSCとDSC/TGAを比較し、金属と金属合金を例として用いて高温でのDSC測定の可能性を示します。
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DSCによる粉末の熱伝導率測定
粉末の熱伝導率の最初の測定[1]により、優れた断熱を達成するために粉末が真空システムの興味深い代替物になり得ることが示されました。現在、包装や建物用断熱材に異なる素材の粉末(セラミックまたはポリマー)が使用されています。一方、粉末の熱伝導率が低いことには、花火製造や爆薬用の高エネルギー粉末の製造や取り扱いにおいて重大なリスクを伴います。したがって熱伝導率を知ることは、自然発火を避けるために重要です。
はじめに
多くの産業活動(陶磁器、粉末冶金、食品など)には粉末の加熱や冷却が伴います。
図1:粉末が詰められ、球体の基準金属ビーズを上部に載せた円筒形パンの略図 |
私たちは熱流DSCを使って粉末の熱伝導率(κ)を測定する新しいメソッドを開発しました。κの測定は選択した純金属基準の融点に応じた個別の温度で行われます。私たちの測定結果は、κはエラーバー±10%以内で測定できることを示しています。
現在、DSCによる固体薄板の熱伝導率κの測定にはいくつかのメソッドが利用可能です[2、3、4] 。Camirandのメソッド[3]では、分析対象のサンプルの平板の上に置いた基準金属の融解ピークを測定します。熱伝導率κはピークの低温側の傾きから得られます。
粉末の難しいところは、粉末をパンの中に詰め込まなければならないことです。これは、熱伝導経路の形状を劇的に変化させる原因になります。私たちはCamirandのメソッドをこれらの特定のサンプルに適応させることに成功しました。
図1に示すように、パンに詰めた粉末の上に球体の基準金属ビーズを載せます。パンを定率で加熱すると、融解ピークの低温側の傾きは粉末の抵抗、Rに依存します。式1を参照してください。
ここでRDSCは粉末なしで測定されたDSCセンサの熱抵抗です。初期の過渡期後、式1によって与えられた一定の傾きがどんなパンの形状にも有効であることが示されました[5]。
市販の円筒形パン[5]や自作の半球形パンなど単純な形状の場合、κは式(2)を使ってR[6]から簡単に求めることができます。
ここで Dm は基準金属ビーズの直径で、 Dp はパンの直径です。半球形パンの定数 ε の値は1です。
円筒形パンのεの値は、高さ/直径比(H/Dp)が異なるさまざまなパンとすべての実践的状況をカバーするさまざまなサイズのビーズについて、定常状態の熱輸送の式を解くことで求めました。補正係数εの一部の特定の値を表1に示します。
表1:本研究で使用されたパンの形状と素材と、κを計算するための補正係数ε パンGは自作しました。 |
最後に、式1によって与えられる傾きは、その長さがさまざまな実験条件に依存する過渡期の後に初めて達することを指摘したと思います[5]。図2は大きい金属ビーズ(Dm = 2.26 mm、図2)の融解時間が過渡期より長く、一定の傾きが得られることを示しています。したがってこの場合、Rは正確に測定できます。
一方小さいビーズ(Dm = 1.29 mm、図2)は融解が早過ぎます。一般的に、式1に従って一定の傾きを得るためには、低い昇温速度を使うことをお勧めします。
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参考資料
[1] Z. Klemensiewicz, Thermal Conductivity of Powders, Nature, 164 (1949) 589-589.
[2] J.H. Flynn and D.M. Levin, A method for the determination of thermal conductivity of sheet materials by differential scanning calorimetry, Thermochim. Acta, 126 (1988) 93–100.
[3] C.P. Camirand, Measurement of thermal conductivity by differential scanning calorimetry, Thermochim. Acta, 417 (2004) 1–4.
[4] R. Riesen, Simple determination of the thermal conductivity of polymers by DSC, UserCom 22, 19–23.
[5] M. Pujula, D.Sánchez-Rodríguez, J.P. López-Olmedo, J.Farjas and P. Roura, Measuring thermal conductivity of powders with differential scanning calorimetry: a simplified method, J. Therm. Anal. Calorim. DOI: 10.1007/s10973-016-5274-4
[6] D.Sánchez-Rodríguez, J.P.López- Olmedo, J.Farjas and P.Roura, Determination of thermal conductivity of powders in different atmospheres by differential scanning calorimetry. J. Therm. Anal. Calorim. 121 (2015) 469–473.
包装材の水蒸気透過性の判定
今日、包装材には高い要求が寄せられています。たとえば用途によって、水蒸気、酸素、付臭剤に対して最適なバリア特性を提供する素材が必要です。それに加えて、引き裂き抵抗、透明性、包装の内容物との適合性に関する条件もあります。この記事では、収着試験システムを用いて素材の水蒸気透過率を測定する方法について説明します。
はじめに
フィルムの水蒸気透過率は重量測定法により非常に高い精度で測定できます。これを行うため、サンプルパンに飽和塩類溶液、水、または乾燥剤を満たし、調査対象のフィルムで覆います。
パンの内容物はパン内の一定の蒸気圧を規定します。パンの内側と外側の分圧の違いにより、水分子がフィルムから発散し、乾燥材によって吸収されます。これによりパンの質量が変化します。質量の変化は定期的にパンを計量することで測定できます¹。
このようにして、調査中のフィルムの水蒸気透過率を特定できます。こうした測定は、ProUmid GmbH収着試験システムを使用して実施できます[1]。
図1は実験用のパンの準備を示しています。この例では、パンの底にモレキュラシーブ(乾燥剤、約2g)が敷かれています。水蒸気透過率を調査する素材をモレキュラシーブの上に締め付けリングによって固定します。余ったフィルムはナイフ(メス)を使って除去します。
1 By “mass of the dish” we mean the mass of the empty dish plus the mass of the film and that of the molecular sieves
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参考資料
[1] R. Kirsch, Water vapor sorption of product packaging using the ProUmid sorption test systems, UserCom 45, 24–25. http://www.proumid.com or http:// www.mt.com/us/en/home/supportive_ content/specific_overviews/ DynamicVaporSorption.html#ptabs_ tab_custom2_li
重複効果を分離するための戦略パート2: TGA
熱分析測定曲線の解釈と評価は、複数の効果が同時に起こる場合は困難です。重複する効果を分離して、その後個別に効果を分析するために使用できるメソッドがいくつかあります。本記事では、適切な例を用いてTGA曲線の戦略について説明します。
はじめに
熱分析測定曲線の解釈と定量評価は、複数の効果が同時に起こる場合は困難です。TGA測定の場合、重複する効果を分離するために適用できる主要な戦略が3つあります。
a) 温度プログラムの変化。これにはさまざまな昇温速度の使用、加熱-冷却-加熱実験の実施、「MaxRes」(昇温速度が自動的に変化するメソッド)の使用が含まれます。
b) サンプルの周囲の環境の変化。これには、異なるガス、異なる圧力、異なるサンプルパンの使用が含まれます。
c) TGA-EGAの使用。質量損失が重複するときに異なる分解産物が形成される場合、TGA-MS、TGA-FTIR、TGA-GC/MS、TGA-Micro GC/MSなどの発生気体分析技術を使用して関連する物質を特定し、定量化することができます。
これらの戦略を以下のセクションで、適切な例を使って説明します。
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これまで不明なメントール多形体のFlash DSCによる証明
特に医薬品業界で、作用物質の多形体の知識が重要な意味を持つようになってきています。この論文ではメントールを例にして、Flash DSCを使用して、これまで不明な多形体を識別し、特性評価する方法を説明します。
はじめに
化学結合の安定性もある媒体における結合の解消性も結合の構造に依存しています。このため、例えば、医薬作用物質の開発時にさまざまな多形体を識別して、その安定性を判断することが重要になります。多形体の迅速な証明によく使われるのがDSCです。
その際に昇温速度と冷却速度の選択が、多形体が見つかるかどうか、およびどの多形体が見つかるかに大きな影響を与えます。液体の構造形成は冷却条件によって大きな影響を受けます。このため、冷却速度によってさまざまな多形体またはさまざまな多形体の混合物が形成されます。加熱中に再組織化プロセスが発生し、さらに多形体があることが示されます。
従来のDSCでは、昇温速度と冷却速度で最大約300K/minまで作業することができます。この論文では、メントールを例にして、Flash DSCを使用して可能な、高い昇温速度と冷却速度で、従来のDSCでは識別できなかった多形体を識別できることを示します。これまで不明だった多形体が左回転のレボメントールでもラセミ化合物でも見つかりました(ラセミ化合物:左回転と右回転のエナンチオマーの1:1の化合物)。
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TGA/DSC-FTIR による不明なポリマー試料の分析
TGA/DSC-FTIR 測定によって、不明なポリマー試料の組成の特長を迅速かつ詳細に分析できます。この論文では、その一例を示します。
はじめに
TGA/DSC と FTIR 分光計を直接結合することにより、加熱中の材料の分解生成物を調べることができます。そこから、元の材料の組成を逆推理することができます。同時に、TGA 実験中に測定された DSC カーブからさらに詳しい情報が得られます。この論文では、不明な黒いポリマー試料の例で、TGA/DSC-FTIR 測定から材料の組成を推定する方法を示します。
実験の内容
測定には、DTA センサ付きの TGA/DSC 1 が使用されました。TGA/DSC 1 は Thermo Nicolet™ 社製の FTIR-Spektrometer iS™50 と接続されました。分解生成物の凝縮を防ぐために、分光計の伝送ラインとガスセルを 200 °Cに保ちました。さらに当社の装置は ATR オプション(ATR = Attenuated Total Reflectance(減衰全反射))を装備し、これにより、透明でない固体の IR スペクトルも記録できます。
室温から 700 °Cまでで、50 mL/min の窒素を使用し、さらに 700 °C以上で 50 mL/min の空気を使用して、測定が行われました。測定は、加熱速度 10 K/min で行われました。IR スペクトルは、分解能 4 波数で行われました。S/N 比を改善するために、各 8 スペクトルが検出されました。この設定で、加熱速度 10 K/min を使用した場合、2 °Cごとに 1 つの IR スペクトルが検出されました。調査対象の試料の数量は、6~9 mg の間でした。
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参考資料
[1] C. Darribère, Evolved Gas Analysis, METTLER TOLEDO Collected Applications Handbook.