熱分析 UserCom 41内容
TAのヒント
- カーブの解釈 Part 4: TGAカーブ
ニュース
- STARe ソフトウェアV14.0
- DSC 3 と DSC 3+
- TGA 2 と TGA/DSC 3+
- 質量測定のグローバルスタンダードGWPによる精確な測定
アプリケーション
- サンプルの信頼できる質量測定 - 最小計量値の概念
- DSCおよびDMAによる形状記憶合金の特性測定 Part 2:DMAによる特性測定
- 高圧パン内の水分を含む樹脂が硬化していく状況
- 高速昇温による融解と分解の分離
サンプルの信頼できる質量測定 – 最小計量値の概念
熱分析では、ミリグラム領域でのサンプルの正確な計量は、特にDSCやTGA測定において、実際の実験の最初のステップです。サンプルの初期質量の測定精度は、測定結果(たとえばDSCでの固有エンタルピーやTGAでの含有量など)の精度に直接影響します。本稿では、サンプルの質量測定の誤差を防ぎ、要求精度の維持を保証する基本的な概念を説明します。この概念は、計量機器の効率的なライフサイクル管理のための科学的な根拠に基づく国際基準、GWP®に基づいています。
はじめに
天秤の質量測定精度を決めるさまざまな要因があります。天秤のデジタル表示による読み取り限界のほかに、最も重要なのは繰り返し再現性(repeatability;RP)、偏置誤差(eccentricity; EC)、非直線性(nonlinearity; NL)、感度(sensitivity; SE)です。この用語を、図1に示します。この点についての詳細な情報は文献[1]を参照ください。
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参考資料
[1] R. Nater, A. Reichmuth, R. Schwartz, M. Borys and P. Zervos, Dictionary of Weighing Terms - A Guide to the Terminology of Weighing, Springer, 2009.
DSC および DMA による形状記憶合金の特性測定Part 2: DMA による特性測定
この記事のPart 1 では、示差走査熱量測定(DSC)によりニチノールの特性を調べました。このPart 2 では、動的粘弾性分析(DMA)により、ニチノールの挙動を調べます。
はじめに
ニチノールのような形状記憶合金から製造される対象物の変形は加熱(形状記憶効果)または変形を生み出した張力の取り消し(超弾性)により完全に元に戻すことができます。この並外れた特性は、結晶格子の可逆転移の結果です。
この記事のPart 1([1] を参照)では、結晶格子の熱的な誘導変態を取り扱いました。ニチノールを例に、DSC 測定により形状記憶効果を調べました。
このPart 2 では、特にニチノールの超柔軟な挙動について説明します。このために動的粘弾性分析(DMA)を使用します。
DMA 実験は、DMA/SDTA861e とDMA 1による引っ張りモードで実施しました。
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参考資料
[1] N. Fedelich, Characterization of shape memory alloys by DSC and DMA, Part 1: Characterization by DSC, UserCom 40, 10–14.
高圧パン内の水分を含む樹脂が硬化していく状況
水分を含むメラミンホルムアルデヒド樹脂が硬化していく状況をDSCを用いて調べました。モデルフリーキネティクス(MFK)を用いて、異なる反応温度での硬化反応の反応予測を行いました。 これらの予測は実際の等温測定で、検証、確認しました。
はじめに
水分を含む液体であるメラミンホルムアルデヒドは、主に木材の装飾コーティングやラミネートコーティングに使用されています。この樹脂は、縮合反応と呼ばれる硬化反応の際に水分を放出します。
最終製品の表面仕上げを完璧にするためには、樹脂の最適な硬化が重要です。これは、製品開発にとっては大きな挑戦でもあります[1]。そのためには、最適化した条件の下でのDSCを用いた分析とこれに続く速度論的予測がその仕事に非常に役立ちます [2, 3]。
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参考資料
[1] Technical Conference Management- European Laminates Conference and Workshop 2010, A. Kandelbauer, G. Wuzella, A. R. Mahendran, Potential of advanced analysis of thermochemical data for predicting technological properties of decorative surfaces
[2] Model free kinetics, UserCom 2, 7.
[3] Tips on model free kinetics, UserCom 8, 1–3.
高速昇温による融解と分解の分離
有機材料の中には、固体形状では化学的に安定していますが、融解の開始と共に分解するものが多くあります。このため、従来の DSC を使用して、融解の効果と分解反応を分離することはできません。ここでは、Flash DSC 1 を用いて高速昇温でこの二つの現象を分離する方法を示します。それによって、融解プロセスと分解反応を別々に解析することができます。
はじめに
純度、組成、多形性、融解熱および融解温度など、有機物に関する多くの情報が、DSC 測定時の融解ピークから導き出されます。この情報はそのサンプルが融解プロセス中に化学的に安定している場合のみ、十分な精度で得ることができます。
しかし、多くの有機材料では、融解が始まるとすぐに分解が始まります。結果として、簡単に分離できない DSC カーブに2 つの重なり合う現象が得られます。さらに、分解が試料の汚染につながり、測定される融点の変化につながる場合があります [1]。
融解と分解を分離する方法の一つは、試料を速い昇温速度で測定することです。融解プロセスの温度は昇温速度に左右されない(またはほとんど左右されない)が、化学反応は昇温速度が速くなると、非常に高い温度にシフトするという現象を利用します。
また、昇温速度が十分に速い場合、融解と分解の両方のプロセスを明確に分離できるほど分解反応が高温にシフトします。しかし、従来の DSC による測定では、この2つのプロセスが分離される前に技術的限界に達達します。
昇温速度 100~150 K/min で測定された有機顔料の例を図1 に示します。どちらのカーブでも、融解と分解が重なっていることがわかります。どちらのカーブでも熱的現象を正しく解析できません。したがって、2 つの現象を分離するには、はるかに高い昇温速度が必要です。現在、メトラー・トレドの Flash DSC 1 で、このような速度を達成できます [2-4]。このFlash DSC 1 は、最大 240万K/min(40.000 K/s)の昇温速度が可能です。
図 1:昇温速度 100および 150 K/min での従来の DSC測定 |
本稿では、Flash DSC 1による測定で、有機物の融解と分解を分離し、個別に分析することができることを示します。
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参考資料
[1] R. Riesen, Influence of the heating rate: Melting and chemical reactions, UserCom 23, 20–22.
[2] The new Flash DSC 1, UserCom 32, 6 –7.
[3] J. Schawe, Practical aspects of the Flash DSC 1: Sample preparation for measurements of polymers, UserCom 36, 17–24.
[4] J.E.K. Schawe, Influence of processing conditions on polymer crystallization measured by fast scanning DSC, J. Therm. Anal. Calorim. (2013).