熱分析 UserCom 29内容
TAのヒント
ラボ日常における測定技術上の概念とその意味、第1部:正確さ、精密さ、および精度
ニュース
- 新製品融点システムExcellenceシリーズ
- バリデーションによる熱分析結果のクオリティ向上
アプリケーション
- 注目:新製品融点システムExcellenceシリーズを使って
- 薄肉フィルムの剪断測定
- 熱硬化性樹脂の等温硬化の間のガラス化に関するTOP-PEM測定
- TMAおよびTGAを使った防火剤の発泡挙動の分析
注目:新製品融点システムExcellence シリーズを使って
融点は、疑いなく、材料特定において重要な熱指数である。そこで、メトラー・トレドは、革新的に新しいものを開発しようと決意した。融点を測定する時の様々な要求に応えるべく、メトラー・トレドは、融点を測定する新しい装置の開発に挑戦した。こうしてできた新しい装置により、従来の融点測定装置では分析できなかった物質を調べることができるようになった。ここでは、このことを様々な例に則して解説する。
はじめに
融点
物質特性の1 つである融点において、物質は結晶相から液相に転移する。純物質の場合は明瞭な融点を持つが、不純物を含んだ物質の場合は、純物質より低い温度で溶融する(融点降下)。有機化合物の場合は、溶融と分解が重なることがよくあり、このことが溶融温度の特定をかなり難しくする。溶融がかなり広い温度範囲にわたって現れることもあり得る。この場合は、溶融範囲という言い方になる。溶融範囲が現れるのは、特にポリマーの場合である。
融点は、研究開発においても品質管理においても、物質の判別およびその純度の検査に使われる。
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薄肉フィルムの剪断測定
薄肉フィルム(フィルム厚50~20μm)は大抵、DMAにおいて引張りモードにより測定される。薄肉フィルムは、しかし、剪断モードにおいても測定できる。本稿では、それがどのように行われるか、また、そこで何に留意すべきかを2つの例に示して解説する。
はじめに
DMA 測定では、サンプルは周期的に変形する。変形に必要な力は、サンプルに作用するだけでなく、サンプルホルダにも作用する。測定された変位量は、従って、サンプルの変形量とサンプルホルダの変形量との総和である。理想的には、サンプルホルダの変形がサンプルの変形と比べて無視できるほど小さいことが望ましい。
薄肉のサンプル( サンプル厚<0.2mm)を剪断サンプルホルダに組み込む際、剪断プレートが組み立て時にかしぎ、その結果、触れ合う危険性がある。
DMA 測定において、こうした状況では、当然のことながらよい結果が出ない。そこで、剪断プレートがかしぐのを防ぐために、一般には、薄肉であっても直径の大きいサンプルを準備し、何とか測定しようとする傾向がある。直径の大きい薄肉サンプルは、しかしながら、サンプルホルダより大きい剛性を持つ結果となる。こうした場合、サンプルホルダの変形は、サンプルの変形より大きく全体の変形に関与することになる。これに応じて、弾性率計算では、測定された全体変形ないしは剛性を修正しなければならない。これは、いわゆる剛性修正をもって行われることになる。
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熱硬化性樹脂の等温硬化の間のガラス化に関するTOP-PEM測定
網状結合系の等温硬化では、硬化温度が、完全に硬化した樹脂のガラス転移温度より低い時、材料はガラス化する。このガラス化プロセスを、温度変調DSCの新技術であるTOP-PEM [1] を使って調べた。TOP-PEMで得られた結果を従来の温度変調DSC(ADSC)による結果と比較した。そこで、最新技術TOP-PEM の幾つかの優位点が確認された。
はじめに
エポキシ樹脂が硬化剤と反応すると、系は、粘液( 初期代謝α= 0)から高分子網状結合組織(代謝α≤1)に変化する。
反応開始時、反応速度は化学反応速度論に従ってコントロールされている。反応しない混合物はガラス転移温度Tg0を有する。反応が進むにつれて代謝は増進し、系のガラス転移温度Tg は上昇する。硬化温度が十分に高い場合、網状結合反応はその限界(α=1)まで進行することになる。その時、完全に硬化した樹脂のガラス転移温度が、最終的なガラス転移温度Tg∞ である。
これに対し、等温硬化プロセスがTg∞ より低い温度で行われると、系はガラス化し、ガラス状態に転移する。これが起こるのは、Tg が等温反応温度Tc に達した時である。この転移の後、分子移動度は著しく低下し、その結果、反応は拡散によりコントロールされる。反応は緩慢になり、代謝は最終値(< 1)に達する。反応運動が主に化学的にコントロールされた反応から拡散によりコントロールされた反応へと変化する時間をガラス化時間と呼ぶ。
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文献
[1] Schawe, J.E.K., Hütter, T., Heitz, C., Alig, I., Lellinger, D.: Stochastic temperature modulation: A new technique in temperature-modulated DSC, Thermochim. Acta, 446 (2006) 147–155.
TMAおよびTGAを使った防火剤の発泡挙動の分析
防火コーティング剤とは何か
防火コーティング剤に使用される材料は、火災などから守らなければならない構造部の表面に遮断層を作り、構造部を熱から守る働きをする。これらの材料が熱に曝されると、膨張した断熱層ができ、構造部を酸素流入や過熱から遮断する。このようないわゆる熱膨張性防火剤は、通常、熱に反応するポリマー結合剤、酸性リン酸化合物(酸供与体)、ポリヒドロキシ化合物(炭素供与体)および燃料(ガス生成体)からなり、ここで、ある一定の温度を超えると発泡が生じるのである[1] [2]。
このメカニズムは次のように説明することができる。酸供与体が分解し、酸が遊離して、炭素供与体の脱水に触媒として働く。全体が溶融し、ガス生成体の分解によりガス生成が起こり、反応液の発泡が始まる。発泡と同時に、三次元の炭素組織からなる固体の「遮断層」が生成する。最終的に防火効率のよい遮断層を形成するには、これらの一連の反応が、正しい順序で起こるようにコントロールすることが重要である。膨張反応の間に作られる泡の量は炭素原子の数に左右される。ヒドロキシ基の数は、脱水プロセスの反応速度を決定し、それで、泡の生成速度がコントロールされる[3]。
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文献
[1] (WO/1993/011196) COMPOSITION WITH INTEGRATED INTUMESCENT PROPERTIES
[2] Troitzsch, Jürgen; International plastics flammability handbook: principles, regulations, testing, 2 nd. Ed. München [u.a.]: Hanser, 1990
[3] F. Laoutid, L. Bonnaud, M. Alexandre, J.-M. Lopez-Cuesta, Ph. Dubois; New prospects in flame retardant polymer materials: From fundamentals to nanocomposites; Materials Science Engineering R, 2008