熱分析 UserCom27内容
TAのヒント
- TGA/DSC による高温での熱容量測定Part 1
ニュース
- Excellence STARe ソフトウェアVersion 9.20
- MultiSTARⓇ TGA-DSC センサ
アプリケーション
- 射出形成部品のガラス転移に及ぼす滞留時間と滞留温度の影響
- エチレンおよびプロピレンのポリマー化:合成から分析までを一社の装置で
- DMA 測定による異方性繊維の構造決定
- TGA-MS 同時熱分析複合システム
- DSC および顕微鏡によるキャンディの熱特性の検討
ヒント/ノウハウ
- TMA 力の検定
射出形成部品のガラス転移に及ぼす滞留時間と滞留温度の影響
はじめに
射出形成では、液状のポリマーは鋳型に流し込まれ、それが冷却する前に一定時間(滞留時間)、圧力下において特定の温度(滞留温度)に保持されます。通常、滞留温度は材料のガラス転移温度よりかなり高く、そのため、原材料が射出形成の過程でどの程度変化し、滞留時間と滞留温度が最終生成物にどのような影響を及ぼすのかについての疑問が湧きます。ここではABS ( アクリロニトリル- ブタジエン- スチレン) と PC ( ポリカーボネート) の混合物を用いて検討し、材料のガラス転移に及ぼす滞留条件の独立および複合的な影響を、シンプルな手法によって特徴付けることができました。今回は滞留温度を 260 °C と 300 °Cとし、滞留時間は 0 分と5 分としました。
[…]
エチレンおよびプロピレンのポリマー化:合成から分析までを一社の装置で
はじめに
重合化は化学工業における重要なプロセスであり、例えば、繊維、フィルム、パイプ、コーティング、射出成形部品など、異なった形状に加工されます。
そして製品は耐久性、化学的不活性、弾性、透明性、電気的、および熱的耐性などの特性を示します。
金属触媒を用いた重要な重合化はZiegler–Natta[1] 反応であり、Ziegler–Natta 触媒はα -TiCl3 と[AlCl(C2H5)2 ]2 との反応で得られます。他に、titanium tetrachlorideあるいはzirconium tetrachloride とAlR3 あるいは Al(CH2CH3)3 の)ようなtrialkylaluminum との反応でも得られます。この触媒は、低圧下で非常に効率よくアルケンを、特にエチレンを重合します。
Ziegler–Natta 触媒の長所は、プロピレンのような置換アルケンから置換アルカンの重合体が規則正しく重合体を形成することにあります。生成する重合体は、ラジカル反応によって得られるものに比べて高い密度と強度を有します[2]。
今回、メトラー・トレド社製AutomatedLab Reactor (ALR) を用いてエチレンとプロピレンの重合反応を検討しました。
小スケールでエチレンの重合反応、およびエチレンとプロピレンとの共重合反応の速度論的検討を行うのにあたって、50mL 容器とガス供給システムを備えた ALR を用いました。ここではガス容器の圧力降下を通じてガスの取り込み量をモニターしました[3]。
また、容器内の温度Tr, とジャケット温度 Tj, との差、つまり、Tr – Tj がモニターしました。この温度差は容器内への熱の出入りの指標となります。さらに、示差走査熱量計(DSC) を用いて生成物の測定をおこないました。こうして重合反応と生成物のキャラクタリゼーションに関して、熱量計とDSCを用いて相補的に検討しましたのでここに報告します。
[…]
文献
[1] Takahashi, T. «Titanium(IV) Chloride-Triethylaluminum»: Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. John Wiley & Sons, Ltd, 2001.
[2] Alt, H.G.; Koppl, A.; «Effect of the Nature of Metallocene Complexes of Group IV Metals on Their Performance in Catalytic Ethylene and Propylene Polymerization» Chemical Reviews. 2000, 100, 1205–1221
[3] Visentin, F.; Graeme, P.; Kut, O. M.; Hungerbühler, K. Study of the Hydrogenation of Selected Nitro Copounds by Simultaneous Measurements of Calorimetric, FT-IR, and Gas-Uptake Signals. Ind. Eng. Chem. Res. 2006, 45, 4544–4553.
DMA測定による異方性繊維の構造決定
はじめに
高分子ナノ複合材料では、少なくとも100 nm より小さい一次元構造の無機微粒子がマトリックスに整然と分散しています。ーボンブラックのようによく知られたナノフィラーは等方性ですが、モンモリロナイト(montmorillonite)のような層状ケイ酸塩は異方性であり、約1:100 の大きなアスペクト比を有しています。ラメラ(板状)ナノ複合材料は2 種類に区別されます。層間挿入構造では、ポリマー鎖は一定の組成比から成るケイ酸塩層と互い違いに層を成し、層内空間には明確なポリマー層が存在します。剥脱ナノ複合材料では、層間のポリマー鎖の長さは連続的に可変であり、層は薄片に裂けます。フィラーの構造とその形態学に基いた構造特性関係は、ナノ複合材料の開発において重要な観点です。そして構造決定のための確立された手法には、透過型電子顕微鏡(TEM)と小角X 線散乱(SAXS) が含まれます。SAXS は数nm の規則構造の分析ができるものの、剥脱ケイ酸塩層の空間分布に関する研究はTEM のみで行われています。(TEM は小板の内部構造と空間分布に関する定量的な情報を与える、複雑な手法であり、一方、SAXS は層間挿入構造のみで使用され、剥脱層の測定には使用できません。).
局所的なフィラーとフィラーのネットワークの配向性の効果を調べるため、ここでは異なる空間方向からサンプルの動的機械分析(DMA) 測定をおこないました。DMA の長所はサンプルの取り扱いと準備が容易であることです。TEMとSAXS はDMA 測定の結果を支持しました。
[…]
文献
[1] Menges G., Haberstroh E., Michaeli W., Schmachtenberg E.: Werkstoffkunde Kunststoffe, Carl Hanser Verlag München Wien 2000
TGA-MS同時測定複合システム
はじめに
熱天びんと質量分析計との同時測定は測定サンプルの質量変化を測定すると同時に発生した分解または蒸発生成物の定性的な情報を与えてくれます。マスス ペクトルの特性は各種異なる実験パラメーターに依存します。この中でサンプル量、ガスフロー、二次電子増倍管の加速電圧(SEM)および熱天びんの加熱炉中の導入キャピラリーの先端の位置が最も重要なパラメーターになります。本稿ではこれらの四つのパラメーターが質量分析の測定結果にどのように影響するかを検討しました。実験はメトラー・トレド社製 TGA /SDTA851e ( ラージファーネス) -質量分析計ThermoSTAR QMS300(Mass範囲 1 ~ 300)同時測定装置を用いておこないました。シュウ酸カルシウム一水和物(CaC2O4 ·H2O) の熱分解反応を反応モデルとして用いました。
CaC2O4・H2O は約120°C 以上で結晶水を失います。無水シュウ酸塩はその後以下の通り、二段階の異なる反応ステップで分解します。
CaC2O4 ⇒ CaCO3 + CO (I)
CaCO3 ⇔ CaO + CO2 (II)
上記の脱水と二段の熱分解反応に伴い、それぞれ12.3%,19.2% および30.1% の化学量論的な質量減少となります。それぞれ異なる反応ステップでCaC2O4・H2O の1 モル当りで各1 モルのH2O, CO および CO2 を発生します。図1 にシュウ酸カルシウム一水和物のTGA-MS 測定結果を示しています。質量分析計により三段の質量減少に相当するH2O, CO および CO2 の発生が検出されています。更にSDTA 曲線から三段階の反応過程は全て吸熱ピークとなる吸熱反応となることが分かります。
図 1:シュウ酸カルシウム1 水和物の熱分解のTGA/SDTA-MS 同時測定結果 |
[…]
DSCおよび顕微鏡によるキャンディの熱特性の検討
はじめに
キャンディ(甘い物)を食べる人にとってはキャンディの物理化学的な性質よりもむしろ味および固さに興味をもつのが普通です。キャンディの固さはしかし構造的な面に大きく左右されます。
ある特性について如何に研究するかについて解説します。特に軟化,融解および結晶化などの挙動について紹介する。このような特性について詳細に知ることは適切な生産および貯蔵条件を決定する上で重要です。
キャンディという言葉には多種多様なキャンディ製品(例えばボンボン、ミルクとクリームキャンディ、ジェリー豆のようなゼラチン状砂糖キャンディなど)を総称する意味を含んでいます。本研究では、市販の三層キャンディを用いて研究した結果について報告します。
[…]