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熱分析アプリケーションマガジン UserCom 24 (日本語版)

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UserComは、熱分析に関わる研究者向けのアプリケーションマガジンです。​

熱分析 UserCom 24(日本語版)
熱分析 UserCom 24(日本語版)

熱分析 UserCom 24内容

TAのヒント

  • 吸着水がポリアミド 6 の機械的特性におよぼす影響

ニュース

  • 熱硬化性物質アプリケーション集
  • ポスター
  • TGA-FTIR-MS インターフェース
  • イントラクーラー
  • 顕微鏡ホットステージクーリングシステム
  • LGC が提供する熱分析用認定標準物質
  • 熱分析用精密分銅(0.2g, 1g, 5g)

アプリケーション

  • DSC 曲線に現れるピーク温度のデータ解析と解釈Part 2: 応用
  • 機械的合金化により調整されたナノ結晶のキュリー温度測定
  • 食品の熱的キャラクタリゼーション
  • 粘土に含まれる有機物質含量の決定

DSC 曲線に現れるピーク温度のデータ解析と解釈Part 2: 応用

このレポートでは、実際の側定例を参照しながら、実験的に得られた溶融ピーク温度から熱力学的妥当性を持つ温度、少なくとも比較可能な特性温度を導き出すための異なるアプローチを紹介します。このような方法による温度決定は、広い溶融範囲を持つ物質や相図を決定する上で非常に重要な意味を持ちます。さらに、ピークデータの解析によって、どこで再組織化プロセスが起こっているかを同定することができます。本稿の最後の部分では、それ以外の事象、たとえば化学反応、二次相転移、蒸発などによって起こるピークについても要点を説明します。

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機械的合金化により調製されたナノ結晶のキュリー温度測定

はじめに


過去 10 年ほどにわたり、弱磁性材料への注目が増しつつあります。このような材料の例として、例えばナノサイズの α-Fe 微結晶(体心立方構造)を含んだアモルファス Fe(Ni)を基材として使用する合金などを挙げることができます。このような材料の磁気特性は、低/高周波変圧器や交流機械、発電機、誘導コイル、センサ、あるいはモータなどに使用できる磁性部品やデバイスに適しています。このような応用に使用するためには、材料の正しいキュリー温度(Tc)を決定することが非常に重要です(キュリー温度とは強磁性から常磁性への転移が起こる温度です)。多くの場合、この特性温度を決定するために熱分析法が用いられます [2]。

このレポートでは、メトラー・トレド熱重量測定装置TGA/SDTA851e を改造して小型マグネットを組み込むことにより、キュリー温度測定を可能にした例について説明します。

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文献

[1] M.E. McHenry, M.A. Willard and D.E. Laughlin, Progress in Materials Science 44 (1999) 291–433.
[2] G. Luciani, A. Constantini, F. Branda, P. Scardi and L. Lanotte, J. Therm. Anal. Calorim. 72 (2003) 105–111.

食品の熱的キャラクタリゼーション

ジェリーベアを例として、キャンディ菓子の熱的特性の完全なキャラクタリゼーションを行いました。2 種類の市販されている製品を対象として、ガラス転移温度、組成、クリープ/流動/膨張/周波数依存特性の解析を行いました。使用した測定法は次のとおりです:示差走査熱量測定(DSC: Differential Scanning Calorimetry)、熱重量分析(TGA:ThermoGravimetric Analysis)、熱機械分析(TMA: ThermoMechanicalAnalysis )、および動的粘弾性測定( DMA:Dynamic MechanicalAnalysis)。

はじめに


ジェリーベア(“Jelly bears”、ドイツ語では “Gummibären”)は、イギリスの “jelly baby“ に触った感じと味が似たお菓子で見た目もよく似ています。食品産業への熱分析の可能性を示すのに最適な材料であることから、本レポートではこれらのお菓子を対象として採り上げます。製造日から実際に食用に供されるまでの期間、ジェリーベアは、温度変化や様々な振動、機械応力、異なる媒質などを含む非常に振れ幅の大きい条件に曝されることになります。熱分析装置を使用すれば、このような変動する条件をシミュレートすることが可能であり、同時にこれらの測定結果から、製品特性を決定することができます。ジェリーベアは、主としてゼラチンとタンパク質、および各種タイプの糖から作られており、炭化水素が全体の重量の最大 78% 程度までを占めます。

お菓子の生の質量が各種成分を加熱することによって得られるという事実と、最終製品の機械的特性が味覚や食感に決定的な影響力を持つという事実から、熱分析は最終製品の均一な品質維持、最終製品およびその特性の最適化に非常に重要な寄与を成し得る分析方法です。

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粘土に含まれる有機物質含量の決定

この研究は、粘土中に含まれる有機物質含量を定量する分析方法としての示差走査熱量測定(DSC)と熱重量分析(TGA)の使用を検討したものです。同じサンプルの炭素含量を電量測定法で決定し、熱分析で得られた結果と比較しました。

はじめに

粘土は、セラミックやガラス産業の様々な応用で使用される原料です。粘土中に含まれる有機物質は、セラミック部品のレオロジー特性や物質挙動に影響を与えることが多いため、このような応用の幾つかでは、粘土が含む有機物質の内容をモニタリングしなければなりません。

炭素含量を正確に決定するためには、炭素分析計を使用します。この方法では、サンプルを燃焼サイクル処理して放出される炭素を電量分析で定量します。熱分析実験(メソッド 1)では、粘土サンプルに温度 25 から1200℃ までの燃焼サイクル処理(空気雰囲気中、加熱速度 25K/min)を行い、その何回かのサイクルで温度 200℃ から 500℃の範囲での重量減少を測定します。 この減少は有機物質の酸化によるものです(図 1、 処理 2)。

一般に、プロセスの最後には、粘土鉱物中の結晶水の脱離(図 1、処理 3)が起こるため、有機物質含量を正確に決定するのが困難(特に有機物含量が少量である場合)になります。

図 1:空気雰囲気中、一定の加熱速度で 1200℃ まで昇温させたときに粘土が示す特性。
図 1:空気雰囲気中、一定の加熱速度で 1200℃ まで昇温させたときに粘土が示す特性。

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ノウハウ